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2012年8月23日木曜日
消費増税でも日本は増税・かなり突っ込んだ社会保障費の抑制が必要
日経BPネットの伊藤元重「瀬戸際経済を乗り切る日本経営論」の2012/8/23付の記事「消費税引き上げで市場に財政健全化の意思と能力を示した」より。
消費税率法案を財政健全化への一里塚にすぎないかもしれないが、重要な一歩であると評価しています。
一方で、「消費税を5%引き上げると、おおよそ13兆円前後の税収増が見込めるよう」であるものの、「政府は足元で毎年40兆円近い財政赤字」を出しており、「高齢化が今後ますます進む中で、13兆円程度の税収増は社会保障費の増大の中にあっという間に吸収されてしまう」。
「高齢化が進む日本で、社会保障費抑制で本当に難しいのは医療費」で、「現在の社会保障制度を維持するだけでも、毎年1兆円ずつ歳出が自然増で増え」、「5%程度の消費税率の引き上げでは焼け石に水」と言います。
「日本の財政健全化を実現するためには、社会保障費が無秩序に膨れ上がっていくことに歯止めをかけなくてはいけない。しかし、今のこの政治的な状況の中で、社会保障の改革を行うことは非常に難しい」問題であるとしています。
しかしながら、医療費の膨張という、「5年先、10年先という少し長い視点から、何が起きるのか、あるいは何をしなくてはいけないのか」に取り組んでいかなければならないと指摘しています。
「足元の状況だけを見るかぎり、ギリシャやスペインよりも、日本の方が財政的には問題が大きいように見える。それでも日本の国債利回りは非常に低い水準にある」理由は、「日本はこれからの制度改革で財政健全化を果たす意思と能力を持っている」と「市場がまだ信じているから」であり、「もしこの信頼が崩れたら、たとえ国内の貯蓄が国債の大半を購入していたとしても、国債の利回りは一気に上がっていくことになる」と警鐘を鳴らしています。
今後10年、20年では、「かなり突っ込んだ社会保障費の抑制策をとらなければいけないはず」で、2030年の日本の社会保障の制度について、年金の支給年齢引き上げ、医療費負担の増加、相続税増、高齢医療費改革、さらなる増税といった、柱となると思われるいくつかの点が挙げられています。
「・年金支給の開始年齢を相当程度引き上げる必要がある。今65歳だが、これがいずれ67歳になり、2030年頃には70歳にまで引き上げられているかもしれない。
・医療費、とりわけ高齢者医療費の抑制と、現役世代への過剰な負担を抑えることが鍵となる。毎年膨大な件数の相続が生じることからも分かるように、高齢者の中にも医療費負担能力のある人は多数いる。そこで、負担能力のある高齢者には費用の一部を負担してもらう方向に行かざるをえないだろう。それから、相続財政に対する課税を強化して、それを高齢者医療費に回していくという方向の改革も検討する必要がある。
・高齢者医療と介護の境界の見直しが必要となるだろう。今、多くの高齢者が医療費という形で介護的なサービスを受けている。「社会的入院」と呼ばれる現象である。スウェーデンなどでは、ずいぶん昔に、医療と介護の境界を見直している。こうした改革が高齢者医療費を抑制する上で大きな意味を持ったという。日本もその方向で大胆に改革する必要がある。
・以上で述べたような大胆な社会保障費の増大を抑える措置は必須だが、それでも社会保障費は増えていくだろう。そこで、それをまかなうためのさらなる増税が必要となる。北欧諸国のように25%まで消費税率を上げていくことが可能かどうかは分からないが、15%あるいは20%までの税率引き上げは視野に入れる必要がある。もちろん、消費税だけが財源ではない。社会保険料の改革、所得税・相続税・環境税による増税なども視野に入れる必要があるだろう。」
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