日本証券経済研究所の中島将隆氏の小論文「日本の国債相場を支えているものは何か」では、日本の国債相場が安定している原因を分析しています。
日本の国債相場が安定している見解は下記のものがあるとしています。
・家計部門の純金融資産説(家計部門の純金融資産>国債残高)
・企業部門の資金余剰説(企業部門の余剰資金が銀行を通じて国債に向かう)
・経常収支の黒字説(経常収支の黒字は一国全体でみれば貯蓄超過を意味し、国内貯蓄によって政府部門の資金不足を埋める)*余剰資金がただちに国債投資に向かうというのは理論的には無関係
・日銀の低金利政策(国債買い入れといった包括的金融緩和政策によって低金利政策が維持され、こうした政策で国債相場が維持される)
・インフラ整備による流動性の高い国債市場(流動性の高い国債市場が相場安定に寄与)
ただ、いずれも、なぜ資金が国債投資に向かうのかが検討されていないと指摘しています。
日本の国債に対する市場の信認は「担税力」であるとしています。すなわち、日本の財政債務がいかに巨額でも、債務を償還する余力があると市場が判断すれば、国債相場は安定する。増税の余地があり、受益に対する支払能力があると市場が判断すれば、または、国民の負担能力があると判断すれば、国債に対する不安は生じないと説明されています。
そして、国際比較では日本の国民負担率は低く、社会保障引上げの余地がある、租税負担率引き上げの余地があると指摘します。
「税と社会保険の一体改革」法案によりひとまず財政再建の道筋がつけられたと評し、財政再建の明確な青写真を作成することが日本の国債の信認を強固にする処方箋だと締めくくっています。
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