日経の「いつかは経済自由人!」の2012/9/4付の記事「金融商品「目の錯覚」にご注意 編集委員・田村正之」では、積立型個人年金保険の表面上は特に見えるが気を付けておきたい事項について対話式で説明しています。
積立型個人年金保険で、「『予定利率は2%を超え、業界でも指折りの高さです。例えば50歳から毎月2万円、15年間積み立てていただくと、積立総額は360万円ですが、15年後に一括受け取りの場合、378万円に増えます。銀行預金よりお得」といった(よくある)営業トーク。
気を付けるべき点は何か?
記事では、次の4点を指摘しています。
①保険商品の予定利率が適用になるのは原則的に純保険料の部分だけ
保険には純保険料(保険金や給付金の支払いに充てる保険の原価)と付加保険料(保険会社の経費・利益、保険者にとってのコスト)に分かれるが、予定利率が適用されるのは純保険料のみ。
純保険料の割合は、「商品によって全然違うので一概にいえないけど、半分くらいの場合も結構ある」とのこと。すなわち、「払ったお金全体に対する実質的な利回りは、予定利率の数字に比べてはるかに低くなるのが通常」となります。(実は販売員でさえ違いをはっきり認識していない人がいるということ。「マネー関係のメディアでも『○○商品の予定利率は○%で、銀行預金より高い』とかミスリーディングな紹介」されていたり、保険の営業員が予定利率を勘違いしているケースもあるようですので、注意が必要)
②時間価値を考慮する(積立総額に比べて18万円増えるのは15年後)
複利での利回りは年約0.7%。
(一定期間一定利率で毎年一定金額を複利運用で積み立てた場合、将来いくらになるかを計算する。『年金終価係数』という考え方です。
参考:マネーの知恵(仮)2011/1/8 単利 複利 現在価値 について(ファイナンスの基本)
③途中解約せずに満期まで持つつもりなら、預貯金じゃなくて国債と比べるべき
世の中の金利の基準は国債。そして、「国債の利回りは、期間が同じ預貯金の利回りより通常はるかに高い」。「金利が過去最低レベルにある今でさえ、10年物国債の利回りは年約0.8%」と説明されています。
さらに「この保険型商品は15年なので、10年物国債より本来は利回りが高くてもいいのにそうなっていない」と指摘。
また、「個人向け国債のような特殊なものを別として」、価格変動リスクはあるが、「満期まで持てば額面が返ってくる」。
「保険型の貯蓄商品の多くも、中途で解約すると手数料などで元本を割り込むことが多い」という点も注意が必要です。
④足元の経済状況がずっと続くと思い込んで商品選びをしてしまうこと(現在だと、低金利・デフレ)
「日銀は、前年比1%の消費者物価上昇率が2014年度にも達成できるという見通し」を示しているが、インフレが年に1%続いた場合の15年後の積立総額の378万円は、現在価値で「約325万円」になるということ。
経済見通しは不確実であり、「セオリーは、確定利回りの商品を使う場合はあまり長い期間のものは選ばない」という考えが示されています。
長期の経済動向は分かりません。現在は1%を割る長期金利も、「1990年以降2011年までの平均でさえ、長期金利の平均は実は約2.5%。00年以降11年まででも1.4%」。
上記の点には注意しつつ、「確定利回りの商品は、安定的に資産を増やしていける利点もある。様々な資産に幅広く投資する中で、確定利回りのものを一部入れておくのは別に悪くない」し、「年金保険には年金保険料控除っていう税制面の優遇もある」という解説がされています。
(筆者注:保険の営業員は、保険をより多く販売することが自らのコミッションになります。そのため、顧客の資産全体のバランスを考えずに、より多く販売しようという姿勢が見られることがあります。この点にも注意が必要です)
他に、錯覚してしまいがちなのは「特に多いのは外貨建て商品」があるとのこと。
(筆者注:このシリーズは期待出来ます!)
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