会社員(給与所得者)は所得税、住民税、年金、健康保険料といった各種控除がされていますが、住民税についての解説を取り上げます。
毎年5月から6月にかけて、給与所得者には当該年度の「給与所得等に係る市区町村民税・都道府県民税 特別徴収税額の決定通知書(納税義務者用)」が交付されますが、個人住民税は前年の所得金額を課税標準とする「前年所得課税方式」をとっています。
*会社を退職した翌年に、収入がないのに前年の住民税の通知が来てアップアップしたという話はよく聞きますね。
本記事は、みずほ総合研究所(2012/12/3)「給与所得者の個人住民税について」を参考にしています。
PDF: http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/sl_info/view_point/pdf/sodan121203.pdf
個人住民税は、地方自治体(都道府県および市町村、東京都特別区)が住民に対して課す地方税。
*国税は国、住民税は自分が住む市区町村に対して支払う税金で、支払先が異なる。
所得税は、納税者の申告によって納付税額が確定する「申告納税方式」ですが、個人住民税は市区町村長が納税者に納税通知書を交付して納税金額を確定する「賦課課税方式」となっている。
*住民税は、所得税から市区町村が金額を算出し、通知がされて金額が決まる(基本は確定申告しない)。
○住民税の種類
均等割・・都道府県および市区町村がともに、納税者の所得金額にかかわらず均等に課税
所得割・・所得金額に応じて課税
利子割、配当割・・都道府県民税として、個人が銀行預金等の利子等や上場株式等の配当等(大口株主等を除く)を受け取ったときに源泉徴収
株式等譲渡所得割・・証券会社等で上場株式等を売却した譲渡所得に応じて課税
○支払い方法は普通徴収か特別徴収を選択する
「普通徴収」・・市区町村から送付される納税通知書に基づいて納税者が自ら納税
「特別徴収」・・給与所得者には地方自治体から勤務先(給与支払者)を通じて特別徴収税額通知書が交付され、給与支払者は給与支払時にその税額を天引きし、給与所得者に代わって納税する(給与所得者の場合は、通常は特別徴収によって納税する)。なお、個人住民税は前年所得課税方式をとっているので、前年1月1日から 12月 31日までの1年間の所得に対する個人住民税は、本年6月から翌年5月までの間の給与から天引きして納税する。
*よく副業の場合には所得税の確定申告書をしたことが住民税で会社にバレてしまうと言われています。
会社に分からないようにしたい場合、所得税の確定申告書の住民税の支払い方法を「普通徴収」にチェックすれば、自分に副業の分の住民税の通知が直接来る、とされています。
退職所得以外に課税される個人住民税(所得割)は、退職月により納付方法が異なる。
1~5月に退職した人は、5月までの個人住民税が退職時に一括して退職月の給与または退職金から天引き。(2月末に退職した場合は、まだ納付していない2~5月の4カ月分の個人住民税は2月の給与または退職金から天引きされる。また、1~2月分の給与に対する住民税分は翌年課税される)
6~12月に退職した人は、退職月の個人住民税だけが最後に受け取る給与から天引きされ、それ以降の個人住民税は、その人の選択に基づいて①退職時に一括徴収、②新勤務先での特別徴収の継続、③普通徴収のいずれかの方法により納付する
○金額の算定
均等割
復興特別住民税加算後で標準税率(平成 26~35年度)都道府県民税 1,500円、市区町村税 3,500円所得割税率
個人住民税の所得割は、一律 10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)の税率が適用
(所得控除額は所得税より若干低くなっている)
○配偶者にパート収入がある場合で、配偶者本人に対して所得税および個人住民税が課税されないケース
世帯主である夫(妻)が収入の柱であっても、配偶者である妻(夫)がパートタイムで働くなどして収入を得る場合。
・所得税
給与収入金額が 162.5万円以下の給与所得控除額は 65万円(収入金額が適用限度額)で、所得税の基礎控除額は一律 38万円。
→年間給与収入金額が 103万円(給与所得控除額 65万円+基礎控除額 38万円)以下なら課税所得金額はゼロとなり、課税されない。
・個人住民税
総所得金額が一定額以下の場合に非課税とする規定が設けられており、扶養親族等がないパート収入のみの場合、この非課税限度額は 35万円
→年間給与収入金額が 100万円以下なら、給与所得控除額 65万円(収入金額が適用限度額)を差し引いた総所得金額は 35万円以下となり、課税されない。
(注意)総所得金額が 35万円以下なら、総所得金額から基礎控除(33万円)を差し引いた金額がプラス(35万円-33万円=2万円)でも課税されない。
一方、総所得金額が 35万円超の場合は、総所得金額から控除するのは非課税限度額の 35万円ではなく、基礎控除の 33万円となります。例えば、年間給与収入金額が 101万円であれば、給与所得控除額(65万円)を差し引いた総所得金額は 36万円となり、この金額に基礎控除(33万円)を適用した後の3万円について課税される。
均等割は、非課税限度額は全国一律ではなく、地域によって 35万円、31.5万円、28万円と、3つの区分に分かれる。
住所地に応じて年間給与収入金額が 100万円、96.5万円、93万円(=給与所得控除額65万円+均等割の非課税限度額)以下なら、課税されない。
例えば、パート収入が 100万円以下の場合、東京 23区など非課税限度額が 35万円の自治体では、個人住民税は所得割、均等割ともに課税されず、また所得税も課税されない。
これに対してパート収入が同額の 100万円以下であっても、非課税限度額が 31.5万円の自治体では、個人住民税のうち所得割は非課税・均等割は課税となる。なお、所得税は課税されない。
○住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
平成 11~18年および平成 21~25年の間に居住し、住宅ローン控除を受けている人で、所得税で控除できなかった金額がある場合は、翌年度の個人住民税所得割から、その控除できなかった年分の所得税の課税総所得金額等の5%相当額(最高 97,500円)を限度に控除される。
○退職金と退職に係る個人住民税
個人住民税は前年所得課税方式をとっているが、退職所得については、退職に伴い所得が発生したその年に、その他の所得とは分離して課税される。
退職者は、退職金支払者(勤務先)に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、その申告書は市区町村長に提出されたものとみなされる。
退職所得と税金の計算:
課税退職所得金額=(退職金収入金額-退職所得控除額)×1/2(注1)
個人住民税額=(課税退職所得金額×10%(注2))×0.9(注3)
注1:平成 25年1月1日以後に支払われる分から、役員としての勤務年数が5年以下の役員等が支払いを受ける退職金については2分の1とする措置の適用外。
注2:内訳は、都道府県民税4%・市区町村民税6%。
注3:平成 25年 1月 1日以降に支払われる分から、10%を控除する措置は廃止。
退職所得控除額の計算:
勤続20年以下・・40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は 80万円)
勤続20年超・・ 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
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