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2012年11月19日月曜日

毎月分配型投信はなぜ売れるのか?心理要因を考える


マネーの知恵(仮)の下記記事では、毎月分配型投信は何故売れるのかについて考えています。
2012/11/18 毎月分配型投信はなぜ人気があり、売れるのか?
http://money-learn.seesaa.net/article/302460005.html

(以下、転載)

毎月分配型投信が日本では投信の売れ筋になっています。
株式型投信の残高は2011年末で45兆円程ですが、70%弱が毎月分配型投信となっています。

この毎月分配型投信ですが、毎月分配をしてしまうことによって資産運用における複利の効果が得られない、多くの毎月分配型投信では元本を取り崩して分配していて運用成果になっていない、分配金を利用する予定がなく分配金で同じ投資信託に再投資する場合には分配金には税金がかかるため控除される税金の分だけ再投資額が少なくなり投資の効率が悪くなるなど、さまざまな識者や専門家からは多くの批判が上がっていますが、依然として人気となっています。
20126月からはさすがに元本を取り崩して払い戻す分は、運用報告書において「特別分配金」から「元本払戻金」とより実態を表すように変わったため、運用報告書をきちんと見ていれば元本の取り崩しで分配がされていることに誤解は生じないように規制がされました。(旧称の特別分配金という名称では元本の払い戻しだと理解していない人も多かったのではないでしょうか。)

私から見ると、
私は資産形成世代で、元本まで勝手に払い戻されてしまうような毎月分配型投信には用はないですし、
そもそも対面で販売されることの多い投資信託ですが、通常の場合では販売手数料を3%、信託報酬2%近くのコストを負担するという負けから入るという高コストは検討する気が起きないくらいあり得ないですし、
さらに分配金を出すためにあの手この手で複合的にリスクを取る運用(通過選択型やカバードコールの組み合わせなど)をされ、うまくいかなかった結果でも元本の一部だけは返ってくるなんて、もはや余計なお世話です。

毎月分配型投信の購入者は、分配金が元本で払われている仕組みがきちんと分かっていない、コスト感覚にも乏しい情弱層なのでしょうか?

日本の家計の金融資産の多くの部分は高齢者が保有しており、投資信託の購入層も大部分は高齢者です。
毎月分配型投信を販売する側に言わせれば、お金のない資産形成世代なんかに用はなく、まとまった資金を持っている高齢者に売れるかどうかが大事なわけです。
毎月分配型投信は高齢者に対して、退職金や年金一時金が入りまとまったお金の運用を日本の超低金利の中で預金利息では割が悪いので有利な運用先を探したい、とは言え、収入が減るのでお金が定期的に入ってくることがとても助かるという点で嬉しい、という点でニーズを満たしているようです。
毎月分配型投資信託の分配金は元本を崩して支払われることもあることは、(仕組みをきちんと分かっていない人との割合は分かりませんが)ある程度多くの投資家は承知しているかもしれないが、それでもなお、預金を取り崩すことと比較すれば、ベターな資産運用のひとつであるために多くの投資家が購入しているということになります。
生活費とは別の口座にお金を移して債券などで運用しつつ、定期的に生活費の口座へ移せば良いのではないかとも思うのですが、生活費とは別の口座にお金を移して債券などで運用を始めることに3%、口座の残高に毎年2%近くを課金されるような仕組みが成り立つのは凄いなあと思います。

このように、高齢者のニーズを満たした理由は、「定期的に分配金をもらえると嬉しいという心理上の効果」が大きいのかと思います。上記で色々と説明したように、経済合理性だけではうまく説明できませんが、心理をうまく捉えた設計と営業がされていると言えます。

高齢者にとっては(いや、高齢者でなくても)、長期的にじっくりと運用益を積み上げていくより、目先でいくらかでもお金が入ってくると嬉しく感じるのが人間心理で、「預金より良いですよ」「年金の足しにしてはいかがですか」というトークとともに、日本では投信のメインの購買層である高齢者のニーズに特にうまくマッチしたという側面があるのだと思います。
元本が取り崩されてお金が入ってきているのだと仕組みをきちんと認識をしているとしても、「現に」毎月お金は入っているし投信で残っているお金はそれなりには運用されているのだと自分に言い聞かせてしまえば、解約することもなく、1度買ってしまったらそのまま持ち続ける、という人も意外と多いのかもしれません。
投信の動向や各種の記事等での販売現場の声を見ていると、元本払戻金によって元本部分が減っていることが理由で投信からの資金流出として反応は強くなく、分配金が減ったら資金流出が大きくなるというように見えますので、心理上の効果は結構大きく働いていると言えるのではないでしょうか。

このような点については、下記リンクの記事では、行動ファイナンスという観点から、双曲割引、代表性のヒューリスティック、プロスペクト理論、心の会計という概念から毎月分配型にハマる人間心理についての日経記事での解説を取り上げています。
マネーのネタ帳(2012/10/5)「毎月分配型投信の購入と保有の理由を行動ファイナンスの観点から考える」
http://moneyneta.blogspot.jp/2012/10/blog-post_1700.html

他に、私の個人的な見解で、毎月分配金型の投信が売れる理由で大きいと私が思っているのは、「金融機関の販売姿勢」です。
毎月分配金型の投信の大半の購入者は高齢者で、年金の上乗せというニーズにうまく乗せて売り込みの営業トークがされます。
「毎月これだけの利回りが入ってきますよ」とご丁寧に「分配金利回り」なる表を見せて、リスクの説明をなるべく曖昧にしつつ分配金がどれだけもらえるかを強調する説明をするため、投資のご経験のない多くの高齢者は「分配金利回りの分の運用がされているに違いない」と思い、「仕組みを十分に理解することなく」買っている。目論見書を精読する人は実際にはいないでしょうし、運用報告書にきちんと目を通す人は、何の根拠もない推測ですが、半分もいないのではないでしょうか。
そして、銀行などで強く勧められると、銀行が悪いものを提供するはずがないのだと信頼して買ってしまう人は多いでしょう。

結果として、「分配金利回り」は「運用利回り」ではなく、多くの分配型投信は「分配金利回り」>「運用利回り」となり、「元本払戻金」となっていますが、上記の心理上の理由で維持されている。

これらが永続的に回っていくやり方なのかどうかは疑問ですが、現実として「分配金有りの投信という巨大なマーケット」を作っている大きな理由であると私は推察しています。

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