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2016年11月29日火曜日

トランプ新大統領誕生を不安視するシリコンバレー

トランプ新大統領の話題が世界中のメディアでもてはやされています。日本でも連日多くのニュースで取り上げられ、特番も組まれています。
今のところ、トランプ新大統領の誕生を市場は好意的に受け止めていますが、移民排斥などの政策を不安視する声は相変わらず続いています。

2016年11月22日付日経新聞
グーグル生んだ移民の活力 新政権で消滅の危機  より

・これまでシリコンバレーなど米国のベンチャー企業をめぐる社会では、実力本位の人物評価で出自を問うてはこなかった
・ここ数年だけでも、非上場で時価総額10億ドルを超えるユニコーン企業が150社以上も生まれており、その半分は移民が創業
・グーグルやヤフーも元はスタンフォード大学で学んだ移民が創業したベンチャー企業
・しかしもしかしたらトランプ新大統領はビザの発行要件を厳しくするなど、移民と白人の対立が深刻化するような政策をとってしまうかもしれない
・現地の人は現状をとても不安ない思い出見守っている

2016年11月24日木曜日

フィンテックとロボアドバイザーは人間の営業にどう影響していくのか

ロボットやAIが社会を変えるという話題を多く目にするようになりました。
資産運用では、ロボアドバイザーのサービスが続々と登場しています。

コミュニケーション能力はロボットが人間に追いつくには、人間ばりの知性を持たないといけないので、当面は人と接する場面では人間の方が優位性を持つでしょう。

論文「フィンテックは資本市場と経済構造をどう変えるのか」(柳川範之)を参考に、今後の在り方を考えてみましょう。
http://www.jsri.or.jp/publish/review/pdf/5611/01a.pdf
記事要旨を一部抜粋
・テレビの天気予報ではお天気お姉さんが出てくる。天気の情報には予想される降水確率を画面に出せば足りるはず。
→同じ情報でも人間が笑顔で伝えることに意味があり、そのようなことができるところに人間の価値がある。

・証券会社の対顧客サービスでも同様で、わざわざ人間を使うところに重要なポイントがある。
どこまで人間を使うのかいいのかは微妙。
例えば、顧客が窓口に行かなくても、営業の人が飛んできてくれるとすれば、顧客は喜んで受け入れるでしょう。
この時、なぜ顧客は喜ぶのか。
もしかしたら、自分のために手間やお金をかけてくれるのが、大事な顧客として扱われていると思えて嬉しいのかもしれない。そうすると、人間でなく、非常に高価なロボットがやってきても、同じように嬉しいと感じることになるのかもしれない。
イケメンのロボットと中年のおじさんではどちらが嬉しいか。
生身のコミュニケーションなのか、顧客が求めているのはむしろイケメンのロボットかもしれない。
顧客が本当に何を求めているか。

・介護の現場。生身の人間から伝わる優しさが重要な役割を果たす。
例えば、下の世話をされるとき、人間よりロボットにやってもらった方が気持ちいいと感じる人がたくさんいる。


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2016年11月15日火曜日

日米金利差の上昇によりヘッジコスト控除後の米国債利回りがマイナスに(2016年11月)




国内債、為替を考慮した外国債券による債券利回りが低下し、インカム狙いの投資には厳しい投資環境が続いています。
三菱UFJ信託銀行2016年11月「バンクローン投資の魅力について」より、日米の利回り差、ヘッジコストの2016年11月足元のチャートが確認できます。
http://www.tr.mufg.jp/houjin/jutaku/pdf/u201611_1.pdf

2016 年2月以降、日銀のマイナス金利の導入により、日本の 10 年国債利回りはマイナスで推移している。 日米金利差は下記表の通り。
下記表は大統領選挙前までのものであるが、2016年11月中旬の足元では、トランプ氏の大統領選勝利により、米国金利が上昇している。



円金利の低下により、米ドルの対円ヘッジコストの上昇している。
下記表より1%弱だったヘッジコストが2016年以降、1%超まで上昇していることが分かる。


ヘッジコストの上昇により、ヘッジコスト控除後の米国債利回りの利回り水準はマイナスになっている。



為替ヘッジコスト控除後の外国債券利回りの低下等を背景に、投資対象の選択肢が狭まる中で、機関投資家を中心に利回り追求の動き (イールドハンティング)が活発化している。
一方で米国の利上げ観測がくすぶる中、変動金利型であり、通常の短期運用に比べて相対的に高い利回りが期待できるバンクローンへの投資が 2013 年頃から金融機関を中心に進み始めている。

2016年11月11日金曜日

全世界に拡大する中国人観光客、現地では現地では爆買い消費以外に爆買い投資も?

中国国家観光局が発表したデータによると、2015年の中国人の旅行者数はのべ41億2千万人に上りました。平均して1人3回は旅行していることになります。また海外旅行をした人ののべ人数は1億2千万人でした。
爆買いと言われる買い物規模も多く、2015年に中国人が海外で買い物をした金額の合計は約10兆円に達します。また地域別にみた場合、日本、韓国、欧米の先進国では、一人あたりの平均買い物額が10万円を超えています。なお、2015年の中国人海外旅行者の1人あたり平均消費額は約18万円です。傾向として、年々中国人旅行者の使える金額の幅は大きくなってきており、買い物や食事に使われる金額も多くなってきています。また年々量より質を重視する傾向になってきています。

なお、爆買いの様相を見せている中国人観光客ですが、彼らの買い物は一般商品に限りません。リゾート地に出向いては、現地不動産を物色し購入するということもしています。
中国商務集団の呉亜最高執行責任者(COO)は、「一部の観光客は米国やマレーシアなどにリゾートに出かけて、現地の環境が素晴らしいと感じると、そこで不動産を買うことを考えるようになり、ホテルを利用しなくなる。中国人の米国での投資額は11億ドル(1ドルは約104.4円)を超えた。報道によると、ロンドンやオーストラリアでは、中国人観光客が投資・購入するため、現地の一部地域で不動産価格が値上がりしたという」と言っています。

国際連合世界観光機関(WTO)のデータを見ますと、2012年以降の海外旅行消費国ランキングで中国は1位を取り続けており、この市場はさらに発展を続けるでしょう。また投資も同時に増え続けていくことが予想されています。

(参考)
人民日報日本語版
世界経済を牽引する中国人観光客 買い物6841億元

2016年10月31日月曜日

9月新規住宅着工数は8万5622戸、前年同月比で10%の増加

10月31日に国土交通省が発表した9月新規住宅着工数は8万5622戸でした。これは前年比で10%の増加であり、3ヶ月連続での増加です。
2016年の新規住宅着工数は1月から5月も前年同月比を大きく上回っており、日銀によるマイナス金利政策の影響が大きいと言えるでしょう。
季節調整済みの年率換算では、98万4000戸となり予定です。

ただ足元で不安な数字もあり、住宅の着工数は増加していますが、特に賃貸住宅市場なのでは着工数の増加ほどに入居需要は増えていません。春先の数字になりますが、例えば東京23区の2016年3月の空室率は33.68%と非常に高い水準にあります。
また、東京近くの神奈川県や千葉県などでも2016年3月の空室率は神奈川県(35.54%)、千葉県(34.12%)と高く、過去の最悪の水準にあります。

空室率の増加は地域にもよりますが、家賃の下落や不動産経営の難化へ繋がるかもしれません。

<参考>
9月新設住宅着工戸数は前年比+10.0%=国土交通省
相続対策でアパート建設を提案される前に知っておきたい空室率の上昇

2016年調査による日本企業の研究開発費上位10社企業

各社の研究開発(R&D)費の動向にも注目が集まっています。現状は特に人工知能(AI)に関連した企業買収や投資が増加していると言えるでしょう。
2016年、トヨタ自動車の研究開発費が増加し1兆円を超えましたが、AI分野への投資が膨らんだためと言えます。

ただ現在、日本企業で研究開発費は1兆円を超えているのは1位のトヨタ自動車しかありません。
一方世界を見渡せば、研究開発に積極的な企業はいくつもあり、特に、米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムは4社はいずれもR&D投資が1兆円を大きく超え、研究領域も自動車などあらゆる産業とAIの融合に及んでいます。

なお、日本企業の2016年調査による年間研究開発費のランキングは以下の通りです(順位・社名下は当該企業の重点研究分野)。1位のトヨタ自動車以外、研究開発費金額は1年前の調査に比較して減少しており、今後の日本企業の開発力が危ぶまれています。

1位 トヨタ自動車(1兆700億円)
・次世代高度運転技術(自動運転技術)など
・新車開発

2位 ホンダ(6900億円)
・車の電動化
・モータースポーツ関連

3位 日産自動車(5600億円)
・電気自動車
・自動運転

4位 パナソニック(4700億円)
・Iot
・トボット技術
・エネルギー関連

5位 ソニー(4500億円)
・ソフトウェア
・ロボット技術
・人工知能

6位 デンソー(4150億円)
・省燃費自動車部品
・高度運転支援技術(自動運転支援技術)

7位 日立製作所(3500億円)
・Iot
・人工頭脳
・セキュリティー
・センサー技術

8位 武田薬品工業(3250億円)
・創薬(消化器系疾患、がん、うつ病)

9位 東芝(3100億円)
・半導体メモリー
・原子力
・社会インフラ

9位 キャノン(3100億円)
・ロボット技術
・人工頭脳
・半導体製造装置

(参考)
スズキを動かしたもの AIと連携欠かせぬ時代
研究拠点、国内に回帰 4社に1社が新増設 16年度本社調査

2016年10月23日日曜日

タワーマンション高層階の固定資産税を2018年度にも増税する方向で(タワーマンション節税)

共同通信より、2018年度よりタワーマンション高層階の固定資産税を2018年度にも増税する方向で検討しているという記事が出ています。
固定資産税に関しての記事ですが、土地の相続税評価についても合わせて同様の改正が入ると思われますが、具体的な補正の影響がどの程度になるのか動向が注目されます。
24日の記事では、「今後新築される20階建て以上(高さ60メートル以上)のマンションを対象」という報道がされています。

〇共同通信より
・政府、与党は20日、タワーマンション高層階の固定資産税を2018年度にも増税する方向で調整に入った。
・おおむね20階建て以上を対象とする。低層階は減税し、1棟当たりの税収は変えない。
*現在は階数に関係なく床面積で税額を決めており、価格が高めのケースが多い高層階と、比較的安い低層階の価格差が税額に反映されておらず、不公平との指摘に配慮した。
・年末までに具体的な対象物件や税額の計算方法を詰め、17年度税制改正大綱に盛り込む。新築時の分譲価格などを参考として、階数の高さに応じて税額を高く設定する。

タワーマンション節税は2015年夏あたりから税制改正の報道が出始めており、2016/1/24日経「「マンション節税」防止 高層階、相続税の評価額上げ 総務省・国税庁、18年にも」では、タワーマンションの高層階の相続税評価の算定ルールを補正する方向が伝えられていました。
(日経記事より)
・国税庁が全国の20階以上の住戸343物件を調べたところ、評価額は平均すると市場価格の3分の1にとどまっていた。
・総務省と国税庁は実際の物件価格に合わせ、階によって評価額を増減するよう計算方法を見直す。具体的な増減幅は今後詰める。高層マンションの20階は1階の10%増し、30階は20%増しといったかたちで一定の補正を行う案が有力だ。
・現在は階層や購入価格にかかわらず一律となっている相続税の「評価額」を高層階に行くほど引き上げ、節税効果を薄める。高層階の物件は税負担が重くなる一方で、低層階を中心に負担が軽くなる人も出てきそうだ

毎日(2016/10/24) タワーマンション 高層階ほど高税率検討 政府・与党
・見直しでは、地方税法を改正し、高層階ほど税負担を重くする方針。マンション1棟全体の税額は変えないため、高層階の所有者は増税になる一方、低層階の所有者は減税になる見通し。今後新築される20階建て以上(高さ60メートル以上)のマンションを対象とする方向で検討する。
・今後新築される20階建て以上(高さ60メートル以上)のマンションを対象とする方向で検討

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2016年8月7日日曜日

資産運用業界で広がるファクター投資について

ファクター投資という概念に注目した資産運用管理が広がっている。

投資家は少しでも低いコストでより高いリターンを追求するための投資行動を取る。

ファクターとは、様々な資産のリターンやリスクに影響する共通要因のことで、経済成長、インフレ、長短金利差、信用力、株式、ボラティリティ、割安度(バリュー)、モメンタム、流動性などを指す。
ファクターこそがリスクとリターンの源泉であるため、アセットクラスのリスク・リターンについて、ファクターによってポートフォリオを分析する方がより本質的な知見が得られると考えられている。

一部の機関投資家では、個別資産のベンチマークを特定のファクター・エクスポージャーを持つものに変更したり、主たるファクターに従って個別資産をカテゴリー分けする例は多く見られ、こうした方法はファクター・ティルトと呼ばれる。

「多面的なリスク・ファクター」という概念は、1970年にまで遡り研究がされてきた。
古くはRoss、Famaら、1990年代にはFama、Frenchによって研究成果が出されている。
長期にわたって最も安定的にアウトパフォームしたファクターは「バリュー」であり、そのほか「低ボラティリティ」、「モメンタム」、「低流動性」にも大きな寄与度が確認されているが、人気の高い「クオリティ」と他に主張されている“ファクター”の寄与度は小さいと見られている。
アルファが一時的な要因でないかどうかには注意が必要だし、PIMCOでは、「多くのファクターには循環性があるため、割高なバリュエーションが過去の標準的な水準に平均回帰する恐れもあり、十分な注意が必要」とされている。

NRIによると、「投資家側も、ファクターに対する投資信念を確立したり、自らの投資目的や制約に照らして様々なファクターを評価することが必要になる。これらはコンサルタントやアドバイザーによる支援が期待される領域である」と主張されている。


(参考)
NRI「ファクター投資で変わる資産運用」
PIMCO「ファクター投資:理論は正当、実践は困難」



2016年7月21日木曜日

メガバンクによる保有株式売却は起こるのか?

[羅針盤]メガバンク、株売却の重荷より

3メガバンクは2015年度下期に保有株売却の加速を決定していました。3メガバンクの2016年3月末時点の株式保有額は12兆円に上りますが、株価変動によるリスクにつながっており、財務の健全性を担保するための措置のようです。

もともと欧米では銀行が株式を持つことは好まれていませんでした。価格変動リスクが高いためです。邦銀の株式リスク量は現行基準では時価の約1.5倍ですが、銀行当局で構成されrうバーゼル委員会は2.5倍に上げる検討もしており、このままでは健全性の基準となる自己資本比率がさがりかねません。

しかし、銀行が売却を行おうにも現在の日本の株式市場の先行きも不透明なため、大量の売却が市場への下落圧力となりかねません。元々邦銀は持ち合い目的で株式の所有を高めていたのですが、そのような行為に対してかねてから批判も多く、そのツケが回ってきた結果といえます。

2016年7月19日火曜日

AIとベーシック・インカム議論の発展が生み出すヘリマネ政策の実現性

ヘリコプターマネーとは何か(7) 統合政府の規律付けが課題
ヘリコプターマネーとは何か(8) ベーシック・インカムと親和性

より

近年のロボット技術やAI(人工頭脳)発達によって、以前はSFの世界の出来事であったようなことが現実的になってきました。人間が働かなくともロボットが基礎的な食糧生産や物品生産、そしてそれらの運送を行ってくれる世界です。このような世界はおそらく技術的には実現可能でしょう。
しかしロボットやAIが人にとって代わって働く世界では、仕事に就いて収入を得ることの難易度が跳ね上がってしまいます。高度な感性を使うような仕事や、ロボットやAIの開発・運用技術者などの仕事は無くならないでしょうか、多くの人が就ける仕事ではありません。そこで現在一部の人の間で真剣に検討されているのが、ヘリマネ(中央銀行による貨幣発行)を原資にベーシックインカムを配布するというアイディアです。

こうしたアイディアは荒唐無稽に感じるかもしれませんが、現在日本をはじめ多くの国が中央銀行による金融緩和(国債の一部引き受け含む)と、それをベースにした政府支出の増加政策を行っており、これは一種のヘリマネともいえるでしょう。
つまり、ヘリマネの実施は既に離陸準備が進んでいるともいえるのです。

もちろんヘリマネ政策がすんなりと実現するというわけではありません。例えば、下記のようなリスクが想定されています。

1投げ捨てられるように渡された貨幣を使わずに退蔵してしまう人が多く発生するリスク
2ヘリマネのような行為が法律上問題がないのかというリスク
3また中央銀行の独立性を歪めることにつながらないのかというリスク

しかし、こうした課題が解決可能であるのであれば、ヘリマネ政策にも実現性があると言えるのかもしれません。

2016年7月13日水曜日

ヘリマネ政策は歴史上どう評価されてきたのか?

【日経新聞】ヘリコプターマネーとは何か(5)貨幣発行、適度なら物価安定
【日経新聞】ヘリコプターマネーとは何か(6)デフレ不況を克服した高橋財政

より

果たしてヘリコプターマネー政策(中央銀行による国民に対しての直接的な貨幣供給)は、日本でも起こりうることなのでしょうか。一昔前なら笑い話になってしまうような政策だったかもしれません。しかし、ヘリマネにはデフレ脱却効果があると言われており、このまま日本のデフレ状況が続くくらいなら、、と政策実現の可能性も0ではないのです。

・過去の日本においても、戦前であれば1931年に蔵相に就任した高橋是清が金本位制をとりやめ管理通貨制度に移行し、日銀に国債の直接引き受けを行わせ貨幣供給量を増やし、世界恐慌による不況からの脱却を実現させた事例があります。この政策は海外の経済学者からも高い評価を集めました。

・しかし上記の政策には高評価ばかりがあるわけではありません。政府はデフレからの脱却後も主に軍費調達のために貨幣の調達を続け、日本経済を極端なインフレに追いやってしまいます。(高橋蔵相が1936年の二・二六事件で暗殺されて以降のことなので彼の責を問うのは酷な気もしますが、、、)

・当然日本以外にもヘリマネやその類似政策の事例は散見され、中には極端なインフレをもたらした事例もありますし、逆に適度な物価を安定させ、経済に好影響を与えたと評価されている事例もあります。当たり前の話ですが、極端に貨幣の供給を増やせば極端なインフレになりますので、経済の状況に合わせた適切な供給増加が鍵と言えるでしょう。

2016年7月11日月曜日

ヘリマネがインフレを起こすのかは経済環境次第

日経新聞で続いた連載、「やさしい経済学 ヘリコプターマネーとは何か?」シリーズは、注目が集まりだしているヘリコプターマネーを理解する上でとても優れた連載です。

【日経新聞】ヘリコプターマネーとは何か(3)
【日経新聞】ヘリコプターマネーとは何か(4)

【関連記事】
ヘリコプターマネーと金融緩和の違い、そして注目の理由

ヘリマネ政策の肝は貨幣発行により経済に出回る通貨量が恒常的に増加することにあると言われています。この政策はハイパーインフレの懸念もあることから、経済学者は積極的な採用を望みません。しかし、デフレ経済下の場合は適切な発行量であればデフレ解消につながるため、好影響の方が大きく現状の日本には合っている可能性が高いと提言する経済学者の方も出てきています。

・ヘリマネの原資を中央銀行の貨幣発行とする場合、名目国内総生産を必ず増やす効果がある
・また貨幣発行は以前のような兌換制度下であればいざ知らず、現代のような管理通貨制度のもとでは誰の負債にもならない
・ただし、貨幣の流通量が増えた分今ある貨幣の価値が薄れるため、実質的な増税効果があるとはいえこれをインフレ税と呼ぶ
・しかし実際にどの程度インフレが起きるのかは経済の状況によってことなり、デフレ環境下であれば遊休資源が多く眠っている可能性が高いので、そうした資源の有効活用に貨幣が向かえば総生産も増えるのでインフレにはならない。名目GDPと実質GDP両方の増加が起こる。
・そのため、現在デフレを大きな課題としている日本経済にとっては、ヘリマネは有効な政策になる可能性があると言える。

2016年7月10日日曜日

ヘリコプターマネーと金融緩和の違い、そして注目の理由

【日経新聞】ヘリコプターマネーとは何か(1)
【日経新聞】ヘリコプターマネーとは何か(2)
より

近頃、ヨーロッパやアメリカのエコノミストを中心に、ヘリコプターマネー論が盛んになってきました。これはヘリコプターで空からお金をばら撒くがごとく、国民にマネーを支給するという政策です。一見荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが、一昔前はマイナス金利も実現生の高い政策とは思われていませんでした。なぜ今著名なエコノミストの間でこの政策に注目が集まっているのでしょうか。

・もともとヘリコプターマネーの政策を提言し、この名称をつけた人物はシカゴ学派の大家M・フリードマン。1969年の論文「貨幣の最適量」にて、この政策について触れています。そしてヘリコプターでマネーがばらまかれるがごとく、国民にマネーが支給された場合、物価は確実に上がるだろうと言っているのです。

・一般的な金融政策では、中央銀行は金融機関から国債を買い取りその結果マネーが市場に供給されます。しかし、そのマネーは金融機関が貸し出しや投資を行わなければ本当の意味で市場には出回りません。経済に影響を与えないのです。一方、一般国民に対して直接マネーを支給した場合、幾らかは退蔵される部分があるとしても、その一部は消費に使われる可能性が高いと言えます。

・そして、その結果物価の上昇圧力が生まれます。またそのために、この政策がデフレだ客のための特効薬になると主張する方も多いのです。

・この政策の核心は中央銀行の貨幣発行益にあるといわれており、事実上0に近いコストで貨幣の発行をできる中央銀行がそのヘリコプターマネーの原資を提供することになります。政府が増税や予算の調整、あるいは国債発行などでその原資を用意した場合は他の需要を減らすことになりますが、中央銀行の貨幣発行にはその心配が要らず、確実に物価を押し上げる効果が期待できます。

・この政策は2000年に当時の米国連邦準備理事会(FRB)理事であったベン・バーナンキやジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授が日本向けの提案として発言し、話題を呼びました。その後は一旦下火になりましたが、近年はこれまでのようなデフレ脱却の文脈を超えて、ロボットやAIが進歩し個人が「労働できなくなった」未来のベーシックインカムと紐づけられて議論が進んでいるのです。

2016年7月9日土曜日

注目集まるGPIFの保有株

【日経新聞】巨鯨の影を追う投資家 GPIFの保有株に関心  より

現在、株式市場はイギリスのEU離脱投票のショック(Brexit)など悪材料が多く、割安株と思える株式の購入にも二の足を踏んでしまう方が多い状況です。そんな中、巨大プレイヤーであるGPIFの動向に関心が集まっています。

・7日に発表された6月第5週の投資部門別株式売買動向では、信託銀行の買越額が前週より83%増加した。その結果買越額は2282億円に膨らんでいる。買い越しが2000億円を超えたのは2016年になって初めてのこと。

・信託銀行の売買動向は、世界最大の機関投資家とも言われるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の動向を写し出すと言われており、Brexitによる相場環境の変化に対応して、GPIFがリバランスに動いた可能性が高いと言われている。

・GPIFは国内株式比率25%を基本ポートフォリオとしているが、6月末の株価急落によってその比率が21%程度にまで落ちており、そのリバランスのための国内株買い越しの可能性が高い。

・また、GPIFは保有銘柄などの投資内容を秘匿しており明らかにはしていないが、市場ではその銘柄を予測し便乗しようという動きが出てきている。GPIFの買余力は単独で5兆円、共済と合わせれば7兆円あると言われており、需要面で大きな支えになる可能性が高いため。

2016年7月6日水曜日

2016年3月時点の全国の地価動向は首都圏のみ上昇、ただし地方でも徐々に下げ止まり

不動産投資の参考に〜市街地価格指数の概要と情報の入手方法〜 より

地下動向の予測は不動産投資などを行っていく上でとても重要なテーマとなります。正確な予測はもちろん難しいのですが、少しで妥当性のある予測をおこなために、現在の価格動向が上昇基調にあるのか下落基調にあるのかを調べると良いでしょう。日本不動産研究所が1年間に2回(3月と9月)に発表する市街地価格指数は参考となる指標です。

・市街地価格指数とは日本不動産研究所が年に2回(3月と9月)に発表する数字で、全国223の都市の地下動向をレポートしたもの。平成12年3月の地下を100としてそこからどう値動きをしたのかを教えてくれており、長期トレンドを掴む参考にもなります。

・長期トレンドとしては全国的には首都圏も含めて大幅な下落傾向。ただし2012年の安倍内閣誕生とアベノミクスの開始や2013年に開催が決定した東京オリンピックの影響を受けてここ数年の首都圏の地下は上昇中。

・その他の地方でも外国人訪問客が訪れることの多い観光地では地下の下げ止まりや、一部地域では上昇が見られる。またリニア中央新幹線の開設など大きなインフラ工事が行われる地域も上昇傾向。

・首都圏でも銀座や新宿、表参道など景気の上昇や外国人訪問客による消費拡大の恩恵を受けやすい地位が特に地下の上昇が大きい。

2016年6月27日月曜日

進む配車サービスの合従連衡、ウーバー対抗に向けて

現在、盛り上がりを見せはじめているスマートフォンによるライドシェア(配車サービス)市場において、業界最大手の米ウーバーテクノロジーズの後を追い、各国のスタートアップや自動車・IT関連大手企業が鎬を削っています。

ウーバーに対抗、世界の競合集結 スマホで車相乗り、570兆円市場争奪 GM・アップル…車やITも
配車サービス大手4社 提携でウーバーに対抗へ
より

・2016年の世界のライドシェア利用回数の予測は63億回でこの数字は1年前の3.7倍。この驚異的な成長をけん引するのはライドシェア市場全体の7割を占める中国。
・ ウーバーは約70カ国・地域でサービスを展開するが、中国では滴滴が約9割のシェアを握っており苦戦が続いている。
・ウーバーのトラビス・カラニック最高経営責任者(CEO)は2016年2月、中国での事業は年間10億ドル以上の赤字であるとコメント。
・滴滴は中国国内400都市で1400万台以上のドライバーを確保しており、タクシーが捕まりにくい大都市や公共交通機関が乏しい地方都市の「日常の足」として定着しつつある。
・またその決済方法には8億人近くが使う騰訊控股(テンセント)の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の電子決済サービスを採用している。
・資金調達にも力を注いでおり、米アップルから2016年の5月には10億ドルを調達、その他にも調達先は多く、総額70億ドル以上の資金を新たに調達。
・ライドシェアにはアップルのような大手iT以外に、米自動車大手のゼネラル・モーターズやトヨタ自動車、フォルクスワーゲンなどもも注目。ライドシェアの会社に出資をしている。
・大手自動車企業にとってライドシェアへの出資は自動車販売台数を減らす可能性も高いため諸刃の剣だが、「所有」から「利用」という市場の変化への対応策の一環としている。
・シンガポールでライドシェアサービスを運営するリフトも中国の滴滴と業務提携をしており、ウーバーの本拠アメリカへの進出を進めている。

2016年6月22日水曜日

利益重視か安全重視か、企業年金の進む二極化と株式離れ


大手企業の企業年金の運用先としてこれまで人気だった株式や債券の比率が下がり、代わりに収益性を狙ったヘッジファンドでの運用を増やすところや、あるいは安全性重視で現金の比率を増やすところなどが出てきています。



・企業年金が株式離れを起こしている理由は、株式の価格変動の大きさ。株式での運用比率は05年の48%から、現在は約20ポイント低下し27%ほどになっている
・代わりに増えているのはヘッジファンドなどのオルタナティブ投資で、10年前は3%程度だったのが10%近くに増えている
・その理由は株式相場の変動をさけるため、不動産関連商品などへの投資も増えてきており、大幅な変動を嫌う心理が見受けられる
・また一部の会社は安全性を重視て、現金比率を高めており、伊藤忠商事は今期から現金比率を1割から25%に高める方針
・債券もマイナス金利の影響で投資対象として手が出しにくくなっており、運用難が進む中で積極的に利益をおうところと、逆に安全性重視のところで二極化が進んでいる

2016年6月19日日曜日

保険営業員の勧める保険の見直しに潜む3つの落とし穴

YOMIURI ONLINE 保険を見直す?悔やみきれない失敗続出 より

保険の営業マンが勧めてくる保険の見直しについて3つの落とし穴が解説されています。
それぞれの内容は以下の通り。

①保険料の値上がりと解約返戻金の落とし穴

まず1つ目の落とし穴は保険料の値上がりです。保険の営業マンはこれまで加入していた保険よりもお得な保険が開発されたからなどと言ってきますが、安易に信じてはいけません。

保険の見直しにおける大原則として、年齢が上がったタイミングでの見直しは保険料の値上がりにつながります。しかしそうであるのに新しい保険にて保険料が上がっていないのは、本来もらえていたはずの積立資金(解約返戻金)が保険料として充当されるような契約形式の乗り換えの可能性が高いのです。

②良い保険をクズ保険に乗り換えさせられる落とし穴

保険会社が乗り換えを勧めてくる際の注意点の2つめは「予定利率の高い商品」から「予定利率の低い商品」に切り替えさせられやすいということです。

かつて投資環境が良かった時代に契約をした保険商品は、現在販売されている保険商品よりも契約者にとって有利な予定利率が組まれていることが多いです。
安易に乗り換えをすると、その有利な利回りを失ってしまう可能性が高いのです。

③待ち期間90日などの落とし穴

保険の乗り換え時、多くの方は乗り換える保険と今の保険との間で支払い保険料に重複期間ができないようにされると思われます。

しかし、安易にそのようなことをすると危険があり、例えばがん保険の場合「待ち期間90日」というルールがあり、保険加入から90日以内に発覚したがんにかんしては給付金の対象外となります。
そのほかにも、例えば保険に加入してから1回目の保険料を支払うまでに起きた出来事は保障の対象外という場合は多いので注意しましょう。

2016年6月14日火曜日

日経ヴェリタス2016年6月11日付「AI投資、人に勝つ日 深化する学び、市場の未来図一変も 」より

日経ヴェリタス2016年6月11日付「AI投資、人に勝つ日 深化する学び、市場の未来図一変も 」より

米経済誌のフォーブスが2015年に発表したヘッジファンドの報酬額ランキングが興味深い内容でした。上位10人のうち5人がITを活用するファンドの設立メンバーだったのです。AIを活用したファンドに関する日経ヴェリタスの記事の要旨をお届けします。

・NYのSOHO地区にある金融ファンド、ツーシグマは異色の金融ファンド
・その運用はディープラーニングを取り入れたAIに頼っている
・従業員の2/3は開発部隊のエンジニアや研究者、休憩時間にロボット作りや趣味のAI開発に勤しむなど、その様はまるで西海岸のテック系スタートアップのよう
・運用成績も高く、今年、多くのヘッジファンドの運用がマイナスに沈んでいる中、同社の代表的なファンドは5月末までで7%のプラス
・アルゴリズムによって投資を行う手法は1980年代に始まり、その後研究も進んできたが、これまで運用原理の核はそのつど人間が設定してきた
・しかし現代のAIによる運用はAI自身が自分で情報を集め、集めた情報とマーケットとの関係を分析し続け、AI自身が運用戦略を考えている
・こうしたAIの効果は顕著で、三菱UFJ信託銀行が開発した投資用AIのシミュレーションでは、学習機能の有無で収益の差が4割以上開いた
・ツーシグマの共同会長シーゲル氏は「世界中をマネーが縦横無尽に動き回り、企業活動も当たり前のように国境を超える。金融市場に影響を与える情報は人間が分析するにはあまりに複雑になった」と語っている

【日経新聞】物価低迷 悩む日銀 15~16日に決定会合 追加緩和には慎重論 より

【日経新聞】物価低迷 悩む日銀 15~16日に決定会合 追加緩和には慎重論 より

記事要旨

・今年1月、日銀はマイナス金利政策の導入を決めたがその後の物価回復の足取りは鈍い
・原油安の影響もあるが、その影響を除いた指標で見ても目標へは達していない
・そのような状況を受けて、追加緩和に行うべきかどうかの議論が進み、15~16日に金融政策決定会合が行われる
・しかし銀行などがマイナス金利政策に猛反発をしており、日銀内でも追加の金融緩和に対しては慎重派が多い
・マイナス金利のさらなる推進以外にも国債の購入量増加などの手もあるが、すでに日銀は多くの国債を買い占めており、このままでは市中の国債のほとんどを日銀が買い取ってしまいかねず、金融政策の打ち手を狭めることに繋がってしまう
・上記のようなこともあり、黒田東彦総裁は「必要があればちゅうちょなく追加措置を講じる」というが、あえての追加緩和が本当に必要なのかについては慎重な議論がされている
・企業業績が好調なことや、人手不足が顕著なことからボーナスなどは期待が持て、今年後半には物価が上昇基調に転ずる可能性もある

量的緩和により世界で長期金利低下 マイナス金利政策の影響

【日経新聞6月11日朝刊】世界で長期金利低下、日独は最低 企業の成長期待しぼむ
緩和頼み、回らぬ歯車 構造改革が急務
マイナス金利国債10兆ドル 全体の半分、日本は8割
では、量的緩和により世界で長期金利低下の状況について解説がされています。



2016年5月末の段階で、全世界のでのマイナス金利の国債の量は10兆4千億ドル(約1100兆円)に達しました。世界の国債残高の総量は20兆ドル程度のため、実に半分もの国債ががマイナス金利という状況です。そして、債券王と呼ばれるビル・グロス氏がこの状況に対して「いつか爆発する超新星だ」どコメントするように、この状況の継続が経済に悪影響をもたらす可能性が指摘されています。
以下、5つのポイントを見ていきましょう。

①現在世界の中央銀行は、物価の安定や経済政策としての金融緩和を目的に、大幅に国債を買い増している。しかしあくまでもこれは一時的な処置であって、中央銀行がこの政策をいつまで続けられるかは不明。また現状は、英国のEU離脱への懸念からリスクの低い国債の購入が盛んという特殊事情もある。

②上記のような中央銀行、金融機関、各種投資かなどの国債購入の増加により、「経済の体温計」とも呼ばれる長期金利が世界的にで低下している。日本でも10年物国債利回りが年マイナス0.155%と過去最低を更新。世界全体でも国債残高の半分近くがマイナス金利という状況。

③本来ここまで金利が下落すれば企業の投資意欲が刺激され、企業による資金調達と設備投資の増加が期待されるが、現状はそのようになっていない。そのため企業の成長期待が下がり、ますます成長に向けた投資が減少するという悪循環にもなっている

④人為的な政策がない場合金利は経済成長への期待度で決まるとされており、経済成長への期待が高ければ、多少金利が高くとも企業は資金を調達し、工場や店舗の建設などの設備投資を行うもの。しかし現状はマイナス金利にもかかわらず、企業の設備投資は伸びていない。
例えば、先進国の企業の内部保留は過去最高水準だが、設備投資はリーマン危機前を下回っており。米アップルのような成長企業ですら、収益を再投資ではなく配当として株主還元に回している状況。

異例の金融政策や英国のEU離脱などの特殊事情によって金利が下がっているが、その間に低金利を活用した投資の活性化が起きなければ、低金利による資金の増加は不動産投資などに回り、世界的に都市部の不動産価格を教えあげてしまうなどのバブル形成(とその後の崩壊)につながりかねない。
こうした状況を改善し、企業の成長余力を高めるためにも、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は経済成長のための規制緩和の実現を各国に呼びかけている。

2016年6月11日土曜日

【日経新聞5月21日朝刊P.17】社債、崩れる「ゼロ金利の壁」 より

【日経新聞5月21日朝刊P.17】社債、崩れる「ゼロ金利の壁」 より

ポイント

①国債以外の債券(例えば社債など)は、日地銀が金融機関支援などのために買い入れを行う場合を除き、これまでゼロ金利以下での取引はほとんど行われることはありませんでした。しかし、現在財投機関債などでもマイナス利回りでの取引が発生し始め、こうした市場の常識が壊れ始めています。

②一見不可思議に見えるマイナス金利の取引における主な買い手は【マイナス利回りでもデリバティブを通してプラス利回りに変えられる海外投資家】と【現金を減らさざる得ない国内投信】の2つです。

③まず海外投資家は、日本の円債を購入する場合に手元のドルを円に変える必要がありますが、現在市場は慢性的なドル不足に悩まされており、ドルと円の両替時に1.5%程度のプレミアムを入手可能。若干のマイナス金利であれば、円債の購入はメリットがあるのです。

④また国内投信は現在信託銀行に預けている解約などに備えた資金の手数料に頭を悩ませています。これらの預け金には4月中旬から手数料がかかるようになったためです。購入した社債の利回りのマイナス幅が先ほどの手数料よりも小さいのであれば、まだ社債を購入した方が良いわけです。現在、このような運用ではなく手元現金を減らすための取引が活発化しています。

⑤このようにマイナス金利の取引も発生し始めている状況は、国内生保などの運用難に悩む大手国内投資家に対し、さらなるダメージを与えてしまうかもしれません。

2016年2月27日土曜日

投資環境マンスリー 2016年3月号(三菱UFJ国際投信)

三菱UFJ国際投信の投資環境マンスリー 2016年3月号がリリースされています。

ポイント:

①米国 個人消費中心の緩やかな景気回復を予想
・サンダース氏とトランプ氏が優勢となれば、金融市場や対中関係の悪化が懸念され、不安定要因となる可能性がある。

②英国 BREXIT – 現時点では不透明なことが多すぎること、これがリスク
・ブレグジット(BREXIT)とは、現在EU(欧州連合)政界で最も使われる言葉で、英国のEUからの離脱を意味する造語。
元来EUには離脱のルールが存在しない。一方、英国内もBREXITを実現させる道も未整備なうえ、目的も見えない。2月後半の為替市場における英ポンド下落も、すべてが不透明、まさにこれがリスクとして認識され売り込まれたと見られる。

③日本 マイナス金利は実体経済への即効性よりも、円安反転による収益改善に期待
・マイナス金利の定着で配当利回りに着目した株式への資金流入も期待か

④オーストラリア 資源安の一服で通貨底打ちの可能性も
・比較的良好な経済環境のもと、原油安に歯止めがかかれば、豪州の利下げ観測後退や国際的な金融市場安定で、豪ドルは対円や対米ドルで緩やかな上昇が期待されそう

⑤中国 景気安定の確証はいまだ得られず、不動産市況の回復基調が一段と強まるかが注目

⑥為替 米国悲観論の修正に伴い円相場も安定へ、ただし不安定な原油・中国動向には要注意
・足元の円高ドル安は、米国株安に代表される世界的なリスク回避色の強まり、さらにそれが米国利上げ期待(ひいては日米金利差拡大期待)のはく落につながったことが主因と考えられる

2016年2月26日金曜日

米国で広がるフィンテックの主なサービス 投資・資産運用分野ではロボアドバイザーのサービスも広がる

金融×ITのFintech(フィンテック)分野が注目を集めています。フィンテックは金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた用語です。
金融庁も2015年12月から、「FinTechサポートデスク」を設け、フィンテック関連ベンチャーなどから新規事業についての相談を電話で受け付け、法律面で問題がないかなどを回答する仕組みを作りました。金融庁は2015年の事務年度の金融行政方針で、国内のフィンテックの動きに速やかに対応するため、民間企業とも協力する方向性を示していました。
日本でも電通国際情報サービスが主催で金融イノベーションビジネスカンファレンスFIBCといったイベントも毎年開かれています。

フィンテックの分野とサービスは、世界経済フォーラムの研究では将来的な実用化に向けたテクノロジーも含め、①決済システム、②資金調達サービス、③銀行・融資サービス、④投資・資産運用、⑤保険、⑥市場インフラの 6 つの分野をフィンテックの中心としており、さらにその中で 11 のサービスが既存の金融サービスに影響を及ぼすイノベーションを生み出しているということです。
○決済システム
・キャッシュレス決済:モバイルペイメント、複数の支払い口座の統合サービス
・電子決済テクノロジー:暗号通貨、電子通貨、P2P 海外送金
○資金調達プラットフォーム
・クラウドファンディング:スマート人材雇用、投資評価
○銀行・融資サービス
・代替融資サービス:P2P 融資、SNS を活用した信用情報(クレジットスコア)
・顧客のニーズへの対応:複数の銀行口座へアクセス可能なプラットフォーム
○投資・資産運用
・投資家向けサービス:ロボットアドバイザー、ソーシャルトレーディング、アルゴリズム取引
・金融企業向けサービス:クラウド、アナリティクス、企業間取引支援
○保険
・保険対象の変化:シェアリング・エコノミー、自動運転車
・コネクテッド保険:IoT やウェアラブルデバイスを活用した保険
○市場インフラ
・市場プラットフォーム:データの自動収集とアナリティクス
・テクノロジー:人工知能、金融情報の自動解析、SNS 上の情報の感情分析

先行する米国では、ニューヨークのフィンテック関連ベンチャー企業への投資額は、2012 年に 2 億 1,100 万ドルだったものの、2014 年には 7 億 6,800 万ドルにまで急拡大しています。
内訳は、融資サービスへの投資が全体の 47%と約半数を占めており、続いて投資関連(15%)、決済サービス(13%)、資産運用(11%)、保険(1%)と続いているようです。
ニューヨークを代表するフィンテック企業には以下のような企業がいます。(図は「ニューヨークだより 2016年2月」 p7より)


資産運用系では、Betterment、LearnVest、BillGuardが挙げられています。
投資・資産運用分野では、様々な投資・資産運用サービスの自動化や、投資の知識を共有するソーシャルトレーディングなどの分野で注目が集まっています。個人投資家の資産運用を自動で行うロボットアドバイザーや、マーケット情報を基に株式や外国為替の自動取引を行うアルゴリズム取引などです。

(参考レポート)
米国におけるフィンテックに関する取り組みの現状(ニューヨークだより 2016 年 2 月)より
http://www.ipa.go.jp/files/000051015.pdf

アメリカでロボアドバイザーのサービスを提供している新興企業はベターンメント(Betterment)とウェルスフロント(Wealthfront)が知られています。
⇒2010年にニューヨークで「テククランチ・ディスラプト」会議を開始したベターンメント
⇒シリコンバレーを本拠とするウェルスフロント
・ユーザーはオンラインやモバイルアプリケーションを通じてリスク許容度や年齢、所得、目標などを入力する。アルゴリズムがこれに基づいて投資商品を提案する。低コストの上場投資信託(ETF)のバスケットの場合が多い。アルゴリズムは定期的に資産配分を見直し、節税目的で損失を確定したりもする。
・ロボアドバイザー企業が請求する年間手数料は運用資産の0.5%かそれ未満のこともある。フルサービスの証券会社は少なくとも1%は徴収する。年間リターンが同じなら10万ドルの投資で、20年間に5万ドル以上も差が付く。
・ロボアドバイス業界の運用資産は来年末には3000億ドルに達する見込み。2012年にはほとんどゼロだった。
・銀行幹部らは人間のアドバイザーが近い将来ロボットに取って替わられるとは思っていない。富裕層は相続や税金、その他アルゴリズムでは対応不可能な複雑な金融取引についてのアドバイスを必要としているからだ。

(参考記事)Bloomberg(2015/11/09)資産運用ロボットがやってくる-BOAのアドバイザー軍団に合流
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NXEFCM6KLVRW01.html

Wealthfrontの特徴:
自動で資産運用を行うロボットアドバイザーのサービスを提供している。口座開設の際に、ユーザーが回答したアンケートとプロフィールからリスク許容度を分析し、自動で資産運用を行う。追加投資した場合などに投資バランスを調整するなど細かい投資を行う。現在、20 億ドルの資産を運用している
(「ニューヨークだより 2016年2月」 p12より)

2016年2月25日木曜日

黒田東彦日本銀行総裁に聞く マイナス金利導入の背景 と反対意見

朝日新聞「黒田日銀総裁、マイナス金利の真意 一問一答」(2016/2/24)にて、黒田東彦日本銀行総裁へのマイナス金利導入の背景をインタビューした記事が掲載されています。

主な内容は下記の通り。
*全般的に「教科書的」な回答が窺えます。

・2016年1月の相場変動を受け(原油価格下落、中国・新興国・資源国の不透明感、世界的に株・為替変動)
(人々が将来も物価が下がり続けると思う)デフレマインドの転換が遅れるリスクが高まっていたので、従来の大規模な金融緩和に加えて導入した。
マーケットがリスクを過度に回避する傾向が続いている気がしますが、日本の経済や物価に与える影響はしっかり見ていく。

・政策効果の狙い
イールドカーブの起点を下げるとともに、従来の大量の国債の買い入れを続けることで、短期から長期まで金利の水準全体を引き下げることが狙い。狙い通り、企業向け貸し出しの基準となる金利や住宅ローンの金利が下がっている。これから設備投資や住宅投資などが増え、経済にプラスの影響が出てくると考えている。

・預金金利への影響は
預金金利はもともと非常に低い水準まで下がっており、預金者の不満は、それが若干、引き下げられたということ。これに比べると、住宅ローンなどの貸出金利の低下の方が下げ幅も経済全体への影響もずっと大きく、企業や家計にとってはプラスになると思う。

・人々は不安になってお金をせっせとため込み、投資や消費に慎重にならないか
そういう懸念は持っていない。マイナス金利政策は我が国では初めてで、いろいろな意見が出ていることは承知している。だが、貸出金利を引き下げ、投資や消費にプラスの影響を与えることを狙っている点では、これまでの大規模な金融緩和と基本的に違いはない。企業向け貸し出しは伸びており、今後も同様に前向きな効果が出るとみている。
預金金利と残高の関係についてはいろいろな研究があるが、基本的には金利が下がれば預金が減るのがふつうで、預金が増えるということはあまり考えられない。

・追加緩和(マイナス金利の引き下げ)
さらなる引き下げには、十分な余地がある。ただ、マイナス金利にすること自体が目的ではない。経済や物価の動向を無視してマイナス幅を拡大することはない。
個人の預金金利がマイナスになることはないと思う。欧州でも四つの中央銀行が、日銀より大きなマイナス金利にしているが、個人の預金金利はマイナスになっていない。

また、日銀の黒田東彦総裁は2月25日午後の衆院財務金融委員会では、「預金金利の低下幅は小さいが、貸し出しの基準となる金利や住宅ローン金利ははっきりと低下している」「今後設備投資や住宅投資に好影響が及び、国民生活にとって必ずプラスになると確信している」と発言しています。一般消費者への影響として、上記と同様に、「預金金利がマイナスになることはない」と述べています。

一方、日経記事(2016/2/25)では、マイナス金利導入の投票に反対票を入れた木内登英審議委員は、マイナス金利は「資産買い入れと整合性がない」と批判しています。国債売却後の資金運用利回り低下により金融機関が日銀に国債を売却しづらくなるため。
マイナス金利と資産買い入れを両立する欧州は、買い入れ規模など日本とは環境が異なるため「必ずしも参考にならない」という。金融機関が「預金者や与信先にコストを転嫁する可能性がある」として、逆に金融引き締め効果をもたらすとの懸念も示している。
基本的スタンスとして、2%の物価上昇は「現行の日本経済の実力を上回る」として、無理に物価を押し上げれば悪影響が及ぶとの懸念すら示しており、「経済の実力に見合ったペースで回復を続けられる政策運営が重要」で、副作用をもたらしかねない大規模な金融緩和はむしろ縮小させるべきだとする立場とされています。

(関連記事)
日銀のマイナス金利導入の背景と反対意見(2016/2/10)
マネーの知恵(仮)(2016/1/23) 下げ相場の時にこそ考えたい「投資の出口」

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相続税対策に搬送する富裕層 純金小分け、タワマン、孫を養子に

相続税が増税されている日本で、富裕層の相続税対策もまた脚光を浴びています。そのような富裕層の対策を追った記事です。

朝日新聞(2015/9/12)「その6億円、税金ゼロで息子さんに…」 節税ブーム
http://www.asahi.com/articles/ASH966G1JH96ULFA00L.html
記事要旨
・純金を100グラムに小分け
「小さなバーにしておけば贈与の場合も売る場合も便利。そりゃ(税金を)意識しています。税務署とは仲良くしないといけませんから」
・タワマン、時価と評価額の落差を「活用」
男性は6億円で株式会社をつくり、銀行から4億円借りて計10億円を用意。そのお金で、東京の六本木や赤坂などのタワマン物件を5戸購入した。息子には、その物件を所有する会社の株式を贈与した。贈与税は「0円」。息子は時価10億円の不動産を持つ会社のオーナーになり、実質的に父の財産を受け継いだ。

息子はそのまま不動産オーナーでいてもいいし、時価の10億円で売れれば、銀行にお金を返しても6億円近い現金を手にできる。物件価格が下がるリスクはあるものの、父親は「まるで錬金術。親も子も救われました」と振り返る。
・孫を養子に
祖父の法定相続人は配偶者の祖母と、実子の娘2人だったが、全員の同意のもとであえて孫に遺産を集中させた。家を継げる男性が孫以外にいなかったこともあるが、相続税を減らす狙いもあった。
祖母や娘を経由して孫に遺産が相続されると、相続税も複数回納めなくてはならないが、祖父から養子への相続なら1回の納税で済む。「孫養子」と呼ばれる手法

このやり方にはリスクもある。親族間の同意がないまま孫養子に遺産相続が集中すれば、別の遺族の遺産の取り分が減り、トラブルに発展しかねない
野村資本市場研究所の宮本佐知子・主任研究員の推計では全国の相続資産の規模は2030年にかけて年間60兆円に達し、総額1千兆円規模の資産が動き出すという。金融機関などは「巨大な市場」とみて節税指南に力を入れる。
少しでも税金を減らし、より多くの財産を子に残したいというのは親としては自然な思いかもしれない。だが、税制の裏をかくような行き過ぎた節税が広がれば、公平な社会に必要な「富の再分配」の機能が骨抜きになってしまう。

金融庁 会計監査の在り方に関する懇談会(第1回)議事要旨

金融庁 会計監査の在り方に関する懇談会(第1回)議事要旨 平成27年10月6日
http://www.fsa.go.jp/singi/kaikeikansanoarikata/index.html

金融庁にて会計監査の在り方に関する懇談会が開催され、下記のような意見が出されました。

・まずは質問がある。製造業などにおける製造委託先に対する部品の有償支給に関して、売上が原価に対して何倍にもなっている取引がある場合に、監査人から何も指摘がないということがなぜ起こるのかがよく分からない。監査人の判断の基準について少し伺いたい。
・内部統制に関して言うと、会社が組織ぐるみで不正を行うと、会計監査では全く分からないと言われるが、分からないはずがない。工事進行基準にしても、在庫の評価にしても、全てリスク・アプローチで想定される伝統的な論点で、内部統制で全く分からなかったということが平然と言われること自体が大問題であると思っている。
・工事進行基準に関して言えば、工事1つ1つがどんな状況であるかについて、会社の中の工程会議等で刻々議論・報告されているわけであり、これが会計監査で分からないというのであれば、もう会計監査を全てやめたらいいのではないかと思うほどである。
・会計不正があると、監査人の監査のやり方に全てフォーカスが向いてしまう傾向があるが、巨大な企業を監査していて、内部統制にも依拠しているわけであるから、正しい決算書を世の中に出すということは、会計監査人だけが使命としてやらなくてはならないことではなく、もちろん財務諸表をつくる企業もそうであるし、企業の中で様々な活動を監視する監査役も重要な役割を果たすであろうし、株主・投資家の眼も大事だと思う。
・特に日本の現行の会計士試験制度は誰でも受験できるような制度になっており、十代の合格者も出てきている。そのような試験に強い若者を否定するわけではないが、やはりきちんとした教養やビジネス感覚があり、一定の社会常識を備えていなければ、企業のミドルレベル以上の方達と丁々発止の議論はできない。特に経営トップの方とそれなりの議論を重ねていくためには、年齢だけではないと思うが、それなりの知見と知識がなければ相手にしてもらえないのではないか。財務、経理を担当される上場会社の方々の中には、非常に優秀な方がおられる。少し言葉は悪いが、そういった方々が、5、6年程度の経験の会計士を手玉にとるのは簡単なことではないかという気がする。
・現在、ITを駆使した取引の全件チェックといった手法について検討が進められているところであり、国際監査基準ではまだそういったものは出ていないのでかなり踏み込んだ議論にはなるが、こうした手法も検討しなければならない環境になってきているのではないか。この懇談会でも環境の変化に対応する監査とはどういうものなのかというところに知恵を出していきたいと思う。
・監査の現場についてお話したいが、基準がかなり飽和状態になっている、あるいは何か事故があると要求事項がどんどん積み重ねられていくということで、手続的に増えているのが実態だと思う。特に期末の監査の手続が増大している中、決められた決算期間の中で監査を終えるのが普通の対応であるので、期末の監査に相当の負荷がかかっているということになると思う。この監査の環境についても、是非議論していただきたいと考えている。
・関与会計士の力量はものすごく大事だと思う。要は、市場を守る責務をきちんと果たせるのかどうかというのが一番大きなところである。何か問題があったときには不適正意見を書かなければならないということではあるが、そういう力量のある会計士が少なくなっているのではないのかという疑問が今、持たれているわけであり、これにどう対応したらいいのか。単に公認会計士を総入替えすればいいという話ではないので、どうしたらいいのかというのが1つあるのだと思う。
・会計不正を監査で発見できなかった事例があったためこのような議論をしているわけだが、実際には、監査をしているときに不正を発見した、あるいは、不正でなくても、会計処理の間違いに気が付いて経営者を説得し、正しい財務諸表を世の中に出したという例はある。確か公認会計士協会で調査をして、1,000人ぐらいの会計士に聞いたところ、過去10年に2回ぐらいはそういったことに遭遇しているとのことである。そういった意味で会計監査が機能している面もやはりあるとは思う。
・監査について、投資家はきちんとやっていて当然だと思っている。投資家からみると監査の具体的な中身がよく分からない中で、専門的な視点のみから改善したと言われても納得し難い面もあるかもしれない。是非外部からも分かるような方策についても議論していただきたいと考えている。

2016年2月10日水曜日

日銀のマイナス金利導入の背景と反対意見

日銀のマイナス金利導入について、1 月 29 日の公表文では、導入理由を下記の通りに挙げています。

①原油下落や新興国の先行き不安が背景となって、企業のコンフィデンスの改善や、人々のデフレマインドの転換の遅延を起こすリスクがあるので、その顕在化を未然に防ぐ。
②原油下落の影響などから2%程度の達成は、2017 年度前半頃にずれ込む。
それに伴って、金融機関収益への悪影響が考えられるので、
③短期国債などに現れる限界的な金利はマイナスにしつつも、金融機関の収益圧迫がないように配慮。

反対意見では、実名入り意見と、主な意見に登場してきた意見を列挙すると、次の通りになる。
白井委員:マイナス金利導入は、資産買入れの限界と誤解される。
石田委員:これ以上のイールドカーブの低下は効果が乏しい。
佐藤委員:マイナス金利導入ならば、マネタリーベース増加の縮小を併せて実施すべき。
木内委員:長期国債の買入れを不安定化させる。
主な意見:すでにマイナス金利を採用する他国中銀とのマイナス金利競争に陥る懸念。
主な意見:金融機関の収益悪化などの問題があるため、危機時の対応策のみ妥当。
主な意見:経済・物価基調は悪化しておらず、追加緩和は正当化できない。

第一生命経済研究所・経済調査部の熊野氏は、副作用にこだわっていてはいけないという決断を見て取っています。
同氏によると、日銀が重視したのは、
(1)マーケットに金融政策の限界をみせてはいけないので行動する、という原則である。
結果的に、
(2)サプライズを起こして影響力を与えるために、副作用の大きさよりもマーケットへの心理的インパクトを重視した。
そして、
(3)過去の議論との一貫性よりも、どれだけ効果が見込めそうかという可能性を手に入れる方
がよいと考えたのだろう、とのこと。

(参考)
BOJ Watching 2016年2月8日
主な意見:割れた意見、マイナス金利~執行部は反対意見を押し切った~ 
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2015/kuma20160208BOJ.pdf


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2016年2月7日日曜日

国税庁に主力の30代職員が不足 中途採用を強化

国税庁が30代の職員が足りず中途採用に励んでいるそうです。
日経記事によると税務調査や徴収業務の中核を担う30代の職員が少なく、現場から「働き盛りが不在」との声が上がっているとのことです。30代は通常、主任級職員として税務調査などの中核を担うが、人事課担当者は「働き盛りの不在を40代と20代で埋めている状況で機動力が落ちている」ということで、税務署長を務めたOBは「将来管理職が不足する恐れもある。放置すれば税務行政全体に影響する」と危惧しているようです。



















日経(2016/2/6付)「国税庁 30代足りない 調査や徴収担う中核、中途採用枠10倍以上に」より

背景は、同庁人事課は「終戦直後の大量採用の反動」と説明しています。
国税庁の職員は国家公務員。このうち税務調査などを担当する国税専門官は試験にパスした後、3カ月間の基礎研修を経て全国12カ所の国税局・事務所に配属されます。同庁によると、国税職員は全国で約5万4千人(昨年4月時点)。うち40代が全体の33.6%を占めるのに対し、30代は17.8%と半分ほどしかいないとのことです。
国税庁は1949年に旧大蔵省(現財務省)の外局として創設された。全国に税務署を配置し税務調査などを行う体制を整えるため、大量採用を行った。しかし反動で54年以降の採用を大幅に抑制。この時期の採用者が定年退職した94年からの10年間は退職者の数も少なく、新規採用数を控えざるを得なかったということです。

国税庁はこれまで10~20人程度だった社会人採用を来年度は約200人に拡大。採用先も全国の国税局に広げ、転職イベントにも積極出展する計画です。
「お堅い印象がありますが税務調査はチームワークが大切。結束力ある職場です」。2016年1月29日、東京都内で開かれた転職イベント。人事課の職員らが仕事の魅力を懸命にアピールしている様子が伝えられています。

国税専門官は国家公務員ですので、その月額給与は国家公務員の税務職俸給表に沿って支給されます。国税専門官は俸給表おいて「税務職」の給与が適用されます。国税専門官を含む国家公務員は勤務年数に応じて、基本的には毎年昇給します。それに加えて職務内容や役職によっても給与は変動します。
国税専門官(税務職)の平均年収は、28歳以上32歳未満で443万円、36歳以上40歳未満で632万円、44歳以上48歳未満で792万円、52歳以上56歳未満で893万円となっています。(人事局 国家公務員給与概要より)

国税庁経験者採用試験(国税調査官級)の概要では、4月1日において、大学等を卒業した日又は大学院の課程等を修了した日のうち最も古い日から起算して8年を経過した者が受験対象となっています。

元国税調査官が暴く 税務署の裏側
松嶋 洋
東洋経済新報社
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2016年1月30日土曜日

2015年の日本の投資信託マーケット

三菱アセット・ブレインズより、「2015年 年間投信マーケット概況」が公表されています。
http://www.mab.jp/upload/market/pdf/attach00000079.pdf

投信マーケット概況は下記の通りサマリーされています。
▪ 2015年の新規設定は592本(2014年:668本) 、1兆8,003億円(同:2兆2,652億円)と前年に比べ設定本数、設定金額とも減少した。
▪ 分類別設定額では、 「外国債券型」が6,224億円と最も多く、次いで「国内株式型」が4,870億円、「外国株式型」が3,730億円となった。設定額の変化では、「国内株式型」は前年から2,298億円と大幅に増加したが、「外国債券型」が前年比4,659億円減少、「ハイイールド債券型」が同1,163億円減少(設定額:205億円)、「不動産投信型」が同628億円減少(同:923億円)と減少が目立った。

▪ 個別ファンド別の新規設定額では、「日本企業価値向上ファンド(限定追加型) 」(1,058億円)が1位で1千億円を上回った。2位は「グローバル・ロボティクス株式ファンド(1年決算型) 」(899億円)。
3位 新光シラー・ケープ日本株式戦略ファンド(リスク・コントロール付)
4位 G金融機関ハイブリッド証券(ヘッジあり)2015-12
5位 日興アムンディ日本政策関連株式ファンド

・流出が多い上位3本と流出額は下記の通り。
1 野村ドイチェ高配当インフラ関連株投信(米ドル)毎月 4061億円
2 グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型) 1593億円
3 GSハイ・イールド・ボンド・ファンド 958億円

DCファンドは規模はまだまだですが、少しずつ拡大していることが窺えます。
▪純資産残高は3兆4,586億円と、前年から3,522億円の増加となった。
▪ 流出入額は2,634億円の流入超と、前年から流入額が601億円増加した。

2016年1月18日月曜日

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2015」 1位受賞は「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2015」というのの結果発表が2016年1月16日(金)にありました。イベントの詳細等はリンク先のブログ記事の通り。
・マネーの知恵(仮) 「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2015」発表 投信のコスト革命により1位はニッセイ外国株式インデックスファンドが獲得、上位常連のVTは3位

要は、個人投資家(ブロガー)が1人5票をお好みの投信・ETFに投じるというもので、159人×5の投票ポイントの集計結果です。
投票層は、30代~40代の資産形成世代で積立投資をしている人たちが多いと思われます。低コストでの長期分散投資を志向している人たちが中心で、インデックス型の商品が人気になりやすいという、いい意味で変わったイベントです。日本の投資信託の平均信託報酬は年率1.61%(モーニングスター調べ)なので、平均の信託報酬を取ったら1%以上の差になると思います。
公式サイト: http://www.fundoftheyear.jp/2015/
1位 投票者数67人、218ポイント獲得
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(ニッセイアセットマネジメント)
2位 投票者数24人、73ポイント獲得
三井住友・DC全海外株式インデックスファンド(三井住友アセットマネジメント)
3位 投票者数22人、59ポイント獲得
【VT】バンガード・トータル・ワールド・ストック ETF(ザ・バンガード・グループ・インク)
4位 投票者数19人、45ポイント獲得
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(セゾン投信)
5位 投票者数14人、41ポイント獲得
ひふみ投信(レオス・キャピタルワークス)
6位 36ポイント獲得
eMAXISバランス(8資産均等型)(三菱UFJ国際投信)
7位 33ポイント獲得
結い2101(鎌倉投信)
8位 32ポイント獲得
世界経済インデックスファンド(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
9位 17ポイント獲得
ひふみプラス(レオス・キャピタルワークス)
10位 iシェアーズ MSCI 日本株最小分散ETF(ブラックロック)(ポイント数不明)

2016年1月17日日曜日

最近のレバレッジ投信の動向について(日銀レビューより)

日銀レビューにて、「最近のレバレッジ投信の動向について」が公表されています。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/data/rev16j01.pdf

「最近、わが国家計によるレバレッジ投信を用いた株式投資が拡大している。レバレッジ投信については、①それにかかるリバランス取引が日々の株価変動を増幅させうる、②多額の資金変動が生じると流動性が低下し、株式市場全体にもストレスを与えうる、といった指摘もあり、その動向に注目が集まっている。これまでのところ、わが国のレバレッジ投信については、日々の株価変動に対する「逆張り」の資金流出入によってリバランス取引の影響は抑制されているほか、その流動性も十分に高いとみられる。
もっとも、レバレッジ投信の規模が増加基調にあることも踏まえると、先行きもレバレッジ投信の動向、とくにストレス時におけるその金融市場への影響には注視していく必要がある。同時に、レバレッジ投信市場をモニターすることは、家計のリスク・テイク姿勢を把握するうえでも有益と考えられる。」
「家計のレバレッジをかけた株式投資の動向は、過去の経験則をみる限り株式市場の温度感を表
す指標の一つであり、新たに拡大している商品の動向を含め、今後とも丁寧に確認していくことが
必要である。また、こうした新たな商品がどのような特性を持ち、とくにストレス時に金融市場にどのような影響を与えうるのかについて、理解を深めていくことも重要であろう。」
としています。

2016年1月12日火曜日

ウォーレン・バフェットによる資産運用の10の教え

アメリカの金融情報サイトのGoBankingRatesの記事「10 Best Money Tips From Warren Buffett of All Time」より

1. Never Lose Money(絶対に損をしないように)
「ルールその1:絶対に損をするな。ルールその2:絶対にルール1を忘れるな」というのはバフェットの有名な教えです。
2. Get High Value at a Low Price(価値の高いものを安く手に入れなさい)
3. Form Healthy Money Habits(健全なマネー習慣を身につけなさい)
4. Avoid Debt, Especially Credit Card Debt(借金を避けなさい、特にクレジットカードは)
5. Keep Cash On Hand(手元に現金を確保しておきなさい)
6. Invest in Yourself(自分自身に投資しなさい)
7. Learn About Money(お金について学びなさい)
8. Trust a Low-Cost Index Fund for Your Portfolio(ポートフォリオは低コストのインデックスファンドに預けなさい)
9. Give Back(還元しなさい)
10. View Money as a Long-Term Game(長期的視野でお金をみなさい)



スノーボール(改訂新版)〔上〕 ウォーレン・バフェット伝 (日経ビジネス人文庫)
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日本経済新聞出版社
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2016年1月2日土曜日

日経新聞の編集委員3人が紹介する資産運用基礎体力向上のためのお勧め書籍

日本経済新聞で株式市場、金融政策、資産運用などを取材する編集委員3人が紹介するマーケットや経済の動きを理解するための「基礎知力」を高めるためのお勧め書籍を紹介しています。
日経(2016/1/1)今年こそ読みたいマネー本 編集委員座談会より

記事中の各人のご発言や推薦理由と合わせて挙げてみました。

○田村正之編集委員
・『株式投資』(ジェレミー・シーゲル著、日経BP社)
個人的に好き。初版は1994年で、いま第4版。
長期で株式投資をすると誰でもお金持ちになりますよという話を、1802年から2006年までの200年を超える米国の長期データに基づいて書いている。
経済成長と株価、景気循環と株価、アノマリー、テクニカル分析、行動経済学など、非常に幅広い分野について基礎的なことを書いてある。

株式投資 第4版
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ジェレミー・シーゲル
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・『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス著、日本経済新聞出版社)
これ一応、私のバイブルなんで読んでほしい。チャールズ・エリスさんが12年に来日したときにインタビューしたんだけど、当時はリーマン・ショックの後で、効率的市場仮説に対する風当たりが非常に強かった時期。エリスさんは「批判はわかるが、インデックス投資も効率的市場仮説も個人が取り得るべき比較的悪くない手段。アセットアロケーションをちゃんと考えて、いろいろなものに分散するのがお薦めだ」と言っていた。そして、「大事なのは世界に投資をし続けることだ」と。

敗者のゲーム〈原著第6版〉
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・『ファスト&スロー(上・下)』(ダニエル・カーネマン著、早川書房)
それほど金融知識のない人でも面白く読めると思う。



○北沢千秋編集委員
・『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著、日本経済新聞出版社)
株式投資の基本理論や歴史の勉強になる。基本のポートフォリオを勉強しましょうということをわかりやすく書いているのがいい。ただ、私はそれだけじゃダメだと個人的には思うけど・
モダンポートフォリオ理論というのは壮大な虚構の世界である。インデックス投資というのは優れた発明だと思うけど、プロパガンダがあまりにも強すぎて、みんなが「インデックス投資万歳」になってしまっているのが非常に危ない。
そもそも、インデックス投資のリターンは、世界経済の低成長と相まって低くなっているし、分散投資の効果も2000年代の半ば以降、3、4割減ったといわれている。そういう変化をもうちょっと考慮して、投資しなくてはいけない時代になっていると思う。
投資理論にたけた人たちは、自分のリスク許容度に合わせたポートフォリオを計算できると思うけど、一般の投資家がそれをできるのかというと、非常に難しいと思うんだよね。そうやってハードルを高くしてきたことが、日本で資産運用がなかなか広がらない原因になってきたのではないかな。

ウォール街のランダム・ウォーカー <原著第10版>―株式投資の不滅の真理
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(関連記事)2010/12/31 ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理 バートン・マルキール/著 井手正介/訳


・『人生と投資のパズル』(角田 康夫、文芸春秋)
行動経済学でお勧め。現実のマーケットに即した本で読みやすい。

人生と投資のパズル (文春新書)
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・『「増やすより減らさない」老後のつくり方』(平山賢一著、講談社+α新書)
アクティブ対インデックスといったって、期間によって違うじゃないかと。インフレの時代にはどうやらアクティブのほうがいいみたいよ、ということを実証的に書いている。同時に、老後の資産運用はリスクを一番に考えましょうといっている。
景気の局面によって資産構成を変えようと。

「増やすより減らさない」老後のつくり方 (講談社+α新書)
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・『新 賢明なる投資家 上・下』(ベンジャミン・グレアム著、パンローリング)
古典を読んで、原点回帰をすべき時代なのではないか。
この本には、株式投資のリスクをどうやって抑制するかということが書いてある。「安全域」というのがキーポイントなんだけど、値が高いときに変な株を買うから失敗するわけで、高くない株価になるまで待てばそんなに大損しないでしょということを書いてある。銘柄選択の本でもあるんだけど、個人にわかりやすくリスクを説いている本だと思う。



○清水功哉編集委員
・『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』(藤沢数希著、ダイヤモンド社)
「効率的市場仮説」を非常にわかりやすく書いた本。


(関連記事)マネーの知恵(仮)2012/9/19 外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々(藤沢数希/著)読後の感想


・田中泰輔さんが21年前に書いた『金融・為替・商品 マーケットはなぜ間違えるのか』(東洋経済新報社)
行動経済学がまだ有名でない時代に、彼は直感的に、「マーケットというのは非常に人間的な部分で動いている、そこを解明しないとわからない」という分析をした。

金融・為替・商品 マーケットはなぜ間違えるのか―揺れる相場の情報行動学
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・山崎元さんと水瀬ケンイチさん『ほったらかし投資術』(朝日新書)
なかなか面白かった。要するに、ある程度大ざっぱにやればいいんじゃないかと。
(田村さん)あんまり難しく考えずに、まず安全資産とリスク資産の配分を決めて、リスク資産は日本株と外国株を半分ずつという感じで、だいたいベストの配分になるんじゃないかと。山崎元さんはインデックス派だけど、この本は北沢さんが言ったような問題意識を取り入れているのがいい。インデックス派って割と原理主義者も多いからな……。

全面改訂 ほったらかし投資術 (朝日新書)
山崎 元 水瀬ケンイチ
朝日新聞出版 (2015-06-12)
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(関連記事)マネーの知恵(仮)2015/7/25 [感想・書評]全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド 山崎元 水瀬ケンイチ/著