国税庁 平成26年7月1日
「被買収会社の従業員に付与されたストックオプションを買収会社が買い取る場合の課税関係」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/02/49.htm
照会内容
・A社はストックオプションを従業員に付与している
・ストックオプションである新株予約権の設計
無償
インセンティブ報酬として従業員に対して付与する目的
従業員が本件ストックオプションを譲渡する場合、取締役会による承認が必要
A社がB社に買収されることが決定。
その際、A社の取締役会の承認を受け、その譲渡制限の解除(譲渡承認)後直ちに、B社が時価で本件ストックオプションを買い取ることに。
→従業員の所得税の課税関係はどうなるか?
回答
・譲渡制限が解除された日において、従業員に給与所得が発生
・給与所得として課税される経済的利益の額(譲渡承認日における本件ストックオプションの価額(時価))に相当する額が本件ストックオプションの譲渡に係る譲渡所得等に係る取得費等となりますので、本件ストックオプションの譲渡により、譲渡所得等は生じない
(例)
付与時 権利行使価額 1株100万円
買収時 株式時価 1000万円
↓
1000万円から100万円の差額である900万円が従業員に給与所得課税(総合課税)となる。
課税時期は取締役会による譲渡承認日。
また、買収が決定していて、譲渡承認日と買収価額は同一となるため、譲渡損益は発生しない。
(理由)
~国税庁回答より~
譲渡についての制限その他特別の条件が付されているストックオプションが付与された場合、付与時点においては何ら経済的利益が実現していないことから、その付与時点において課税関係は生じませんが、ストックオプションの権利行使をする場合、取得した株式の価額と権利行使価額との差額が経済的利益として実現することから、その権利行使時に当該経済的利益について課税関係が生じることになります(所得税法施行令第84条)。
一方、照会の場合、従業員は本件ストックオプションの権利行使をしていませんが、その譲渡を行うに当たり、A社の取締役会の承認を得て譲渡制限を解除する必要があり、その結果、従業員(本人)の意思による第三者への譲渡が可能となります。この譲渡制限の解除により、それまで未実現と捉えられていた経済的利益が顕在化し、収入すべき金額が実現したものと考えられます(注)。
(注) 新株予約権等(株式を無償又は有利な価額により取得することができる一定の権利で、当該権利を行使したならば経済的な利益として課税されるものをいいます。)をその発行法人に譲渡した場合についても、当該譲渡の対価の額から当該権利の取得価額を控除した金額を、給与所得等の収入金額とみなすこととされています(所得税法第41条の2)
[関連リンク]
「スタートアップが知っておくべき資本政策の考え方」(スライドシェア)
http://www.slideshare.net/EisukeIto/110924-samurai
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金融に関するニュースやブログ記事について紹介するブログです。
金融・経済の動向や、ライフプランとパーソナルファイナンス(資産運用、財産管理、タックスプランニング)、法人・個人の財務の話などをテーマとします。
2014年11月7日金曜日
相続の際の資金手当てに有効 個人向け信託の主な種類のまとめ
家族の財産を管理したり受け継いだりするのに有効とされ、相続の際の資金手当てや残された家族の生活の安定に役立つ場合がある信託の活用に注目が集まっているという日経記事です。
参照:日経 2014/11/7「相続増税で身近に 知っておきたい個人向け信託」
<記事まとめ>
信託協会の振角秀行専務理事は「揺りかごから墓場までラインアップをそろえていきたい」と語る。
信託は、簡単に言えば、財産の運用や管理を信頼できる人や専門の機関に任せる仕組み。契約者(委託者)が金融資産を金融機関など(受託者)に預けて、家族ら(受益者)が決まった額を一時金や年金形式で受け取るもの。
信託銀行をはじめとした金融機関などが関与せずに家族の誰かなどが受託者となって財産の運用・管理をするケースが多い。司法書士や弁護士らが提案している場合もある。
個人向けの商品の主な信託の種類
・金銭信託
家族信託 ~ 遺言代用信託・後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
教育資金贈与信託
後見制度支援信託
・有価証券信託
・生命保険信託
・遺言信託
○教育資金贈与信託(子や孫への教育資金の贈与が非課税に)
・教育資金を一括で贈与する場合、子や孫1人当たり1500万円まで非課税になる。信託銀行にまとまった金額を預けて、子や孫の教育費が必要になったら、領収書と引き換えにお金を引き出す仕組み。
・2014年9月末の契約件数は約8万9000件、金額は約6000億円(6月末からそれぞれ1万2000件、850億円増)
○遺言代用信託
・本人が委託者となり信託銀行と信託契約を締結し、金銭を信託する。遺族を受益者として、一時金や定時定額の受け取りが出来る仕組み。
・一時金は葬儀費用や相続税が課された際の納税資金に充てることができる。通常の預金は名義人が亡くなると凍結され、相続が完了するまで引き出せない。同信託は死亡診断書と通帳、受取人の本人確認書類、印鑑があれば、早ければ即日お金を受け取れる。信託した資金は相続税の課税対象になるが、分割協議から除外され、指定した人に渡すことができる。
・相続発生時に妻が200万円の一時金をもらい、残りの600万円は生活費として毎月5万円ずつ娘が受け取るような仕組みが可能。「遺言ほど大げさな形にしたくなかった」との顧客の声が紹介。
・手続きの簡便さや元本保証といった点は各行の商品に共通
・遺言信託は遺言の作成助言から、保管・執行までをパッケージ化した商品の名称で、信託業務ではないため別物
○後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
・本人が生きている間は本人がお金を受け取り、本人死亡後は配偶者、配偶者死亡後は子どもといったように受取人を連続で指定できる仕組み
・遺言では財産の行き先を決められるのが次の代までだが、その先まで指定できるのが特徴
・事例として、80代の男性A氏がは50代の長女を最初の受取人に、80代の男性A氏の養子でもある長女の子を次の受取人にして5000万円を預けた。自分が生きている間は医療費などでその都度引き出せるようにし、自分が死んだ後は長女がお金を使い果たす不安があるので、月20万円の分割コースを選択。
「長女が亡くなった際には残ったお金が他の相続人ではなく、確実に長女の子に受け渡せるようにと、この信託を選んだ」
・後継ぎ遺贈型は、例えば子どもがいない夫婦で夫が配偶者の次まで財産の行き先を決めておきたいというケースでもニーズがある。
○有価証券信託
・企業オーナーらが自社株を信託
○生命保険信託
・生命保険の契約者が金融機関と契約し、将来の保険金の使い方を決めることができる
○後見制度支援信託
・認知症の高齢者などの財産を信託銀行などが安全に管理する
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参照:日経 2014/11/7「相続増税で身近に 知っておきたい個人向け信託」
<記事まとめ>
信託協会の振角秀行専務理事は「揺りかごから墓場までラインアップをそろえていきたい」と語る。
信託は、簡単に言えば、財産の運用や管理を信頼できる人や専門の機関に任せる仕組み。契約者(委託者)が金融資産を金融機関など(受託者)に預けて、家族ら(受益者)が決まった額を一時金や年金形式で受け取るもの。
信託銀行をはじめとした金融機関などが関与せずに家族の誰かなどが受託者となって財産の運用・管理をするケースが多い。司法書士や弁護士らが提案している場合もある。
個人向けの商品の主な信託の種類
・金銭信託
家族信託 ~ 遺言代用信託・後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
教育資金贈与信託
後見制度支援信託
・有価証券信託
・生命保険信託
・遺言信託
○教育資金贈与信託(子や孫への教育資金の贈与が非課税に)
・教育資金を一括で贈与する場合、子や孫1人当たり1500万円まで非課税になる。信託銀行にまとまった金額を預けて、子や孫の教育費が必要になったら、領収書と引き換えにお金を引き出す仕組み。
・2014年9月末の契約件数は約8万9000件、金額は約6000億円(6月末からそれぞれ1万2000件、850億円増)
○遺言代用信託
・本人が委託者となり信託銀行と信託契約を締結し、金銭を信託する。遺族を受益者として、一時金や定時定額の受け取りが出来る仕組み。
・一時金は葬儀費用や相続税が課された際の納税資金に充てることができる。通常の預金は名義人が亡くなると凍結され、相続が完了するまで引き出せない。同信託は死亡診断書と通帳、受取人の本人確認書類、印鑑があれば、早ければ即日お金を受け取れる。信託した資金は相続税の課税対象になるが、分割協議から除外され、指定した人に渡すことができる。
・相続発生時に妻が200万円の一時金をもらい、残りの600万円は生活費として毎月5万円ずつ娘が受け取るような仕組みが可能。「遺言ほど大げさな形にしたくなかった」との顧客の声が紹介。
・手続きの簡便さや元本保証といった点は各行の商品に共通
・遺言信託は遺言の作成助言から、保管・執行までをパッケージ化した商品の名称で、信託業務ではないため別物
○後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
・本人が生きている間は本人がお金を受け取り、本人死亡後は配偶者、配偶者死亡後は子どもといったように受取人を連続で指定できる仕組み
・遺言では財産の行き先を決められるのが次の代までだが、その先まで指定できるのが特徴
・事例として、80代の男性A氏がは50代の長女を最初の受取人に、80代の男性A氏の養子でもある長女の子を次の受取人にして5000万円を預けた。自分が生きている間は医療費などでその都度引き出せるようにし、自分が死んだ後は長女がお金を使い果たす不安があるので、月20万円の分割コースを選択。
「長女が亡くなった際には残ったお金が他の相続人ではなく、確実に長女の子に受け渡せるようにと、この信託を選んだ」
・後継ぎ遺贈型は、例えば子どもがいない夫婦で夫が配偶者の次まで財産の行き先を決めておきたいというケースでもニーズがある。
○有価証券信託
・企業オーナーらが自社株を信託
○生命保険信託
・生命保険の契約者が金融機関と契約し、将来の保険金の使い方を決めることができる
○後見制度支援信託
・認知症の高齢者などの財産を信託銀行などが安全に管理する
高橋 倫彦 石脇 俊司
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ファンドラップを推進する証券会社(水戸証券の取り組み)~「お客様とのつながり」という入り口~
野村総研の「金融ITフォーカス」2014年11月号では、水戸証券執行役員(経営企画・投資顧問部担当)の阿部進氏へインタビューがされています。
・野村総研 「金融ITフォーカス」2014年11月号
金融×IT対談
水戸証券株式会社 執行役員 経営企画部・投資顧問部担当 阿部 進 氏
×
野村総合研究所 小川 宣雄
http://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/kinyu_itf/2014/itf_201411_2.pdf
証券業界で販売手数料重視の姿勢から資産管理型営業を推進する動きが強まっている流れの中、水戸証券のファンドラップの推進の取り組みについて語っています。
アメリカではフィービジネスが先行しており、SMAやファンドラップなどの投資一任契約の残高が伸びています。
日本においても徐々に対面型証券ビジネスの変革が進み、アドバイスニーズが高まるはずとのシナリオのもと、ストック収入を増やして安定的な利益の計上を目指すにはどうすればいいのかを考えたところ、ファンドラップが最適な商品と位置づけたとのことです。
ファンドラップは契約を結んだ時点では「お客様とのつながり」という入り口で、その後、定期的にフォローを続けていくことに付加価値が見い出せるサービスで、マーケットが変動しているときにこそ、説明力がプラスに働く特性を持っていると説明されています。
ファンドラップはややもするとバランス型の投資信託と思われがちなのを、人が介することによって付加価値が付けられるかが勝負です。
年一回、戦略的アセットアロケーション(SAA)を決めるだけでなく、SAAをベースに適宜見直し、きめ細かい運用をやっていることを伝えていきたいと言います。
契約書類やリバランス時の報告書が多すぎるというのが顧客からの改善要望とのことです。
消費者アンケートでは、ファンドアップを選んだ理由・増額した理由として「パフォーマンスがよかったから」はもとより、
「分散投資ができる」
「お客様へのフォローがよいから」
「営業マンと定期的に話せるようになった」
「運用している中身がよく理解できるようになった」
といった感想が高い満足度につながったケースが多いようです。
販売員には全員にファイナンシャルプランナーの資格取得を目標に、社内でもファンドラップのロールプレイングを実施しているそうです。
*
水戸証券のIR資料によると、2014年3月末のファンドラップ残高は286億円。
中期経営計画での期間純増目標は190億円。
証券会社別には、大和 5,648億円、野村 2,417億円、SMBC日興 1,235億円、みずほ 302億円に次ぐ5位となっています(投資顧問協会開示資料より水戸証券集計)。
*筆者追記
「パフォーマンスがよかったから」というのは単にマーケットがよかったからというだけです。
逆にマーケットが横ばい、下落していく際にきちっとリレーションが継続できるかが、今後の試金石になります。
運用に通じている筋からはコストが高すぎるという批判の多いファンドラップですが、コスト以上の便益を提供できるかどうか、ファンドラップの今後が掛かっています。
【参考記事】
・2015/9/22 銀行の投信販売現場に行ってきました。親が銀行のお客様(上カモ)だった!(その3)
ファンドラップ ~コストと期待リターン -多くの人は0.5%以下の利回りに2.5%以上の手数料を払っている!?
http://money-learn.seesaa.net/article/426530132.html
・野村総研 「金融ITフォーカス」2014年11月号
金融×IT対談
水戸証券株式会社 執行役員 経営企画部・投資顧問部担当 阿部 進 氏
×
野村総合研究所 小川 宣雄
http://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/kinyu_itf/2014/itf_201411_2.pdf
証券業界で販売手数料重視の姿勢から資産管理型営業を推進する動きが強まっている流れの中、水戸証券のファンドラップの推進の取り組みについて語っています。
アメリカではフィービジネスが先行しており、SMAやファンドラップなどの投資一任契約の残高が伸びています。
日本においても徐々に対面型証券ビジネスの変革が進み、アドバイスニーズが高まるはずとのシナリオのもと、ストック収入を増やして安定的な利益の計上を目指すにはどうすればいいのかを考えたところ、ファンドラップが最適な商品と位置づけたとのことです。
ファンドラップは契約を結んだ時点では「お客様とのつながり」という入り口で、その後、定期的にフォローを続けていくことに付加価値が見い出せるサービスで、マーケットが変動しているときにこそ、説明力がプラスに働く特性を持っていると説明されています。
ファンドラップはややもするとバランス型の投資信託と思われがちなのを、人が介することによって付加価値が付けられるかが勝負です。
年一回、戦略的アセットアロケーション(SAA)を決めるだけでなく、SAAをベースに適宜見直し、きめ細かい運用をやっていることを伝えていきたいと言います。
契約書類やリバランス時の報告書が多すぎるというのが顧客からの改善要望とのことです。
消費者アンケートでは、ファンドアップを選んだ理由・増額した理由として「パフォーマンスがよかったから」はもとより、
「分散投資ができる」
「お客様へのフォローがよいから」
「営業マンと定期的に話せるようになった」
「運用している中身がよく理解できるようになった」
といった感想が高い満足度につながったケースが多いようです。
販売員には全員にファイナンシャルプランナーの資格取得を目標に、社内でもファンドラップのロールプレイングを実施しているそうです。
*
水戸証券のIR資料によると、2014年3月末のファンドラップ残高は286億円。
中期経営計画での期間純増目標は190億円。
証券会社別には、大和 5,648億円、野村 2,417億円、SMBC日興 1,235億円、みずほ 302億円に次ぐ5位となっています(投資顧問協会開示資料より水戸証券集計)。
*筆者追記
「パフォーマンスがよかったから」というのは単にマーケットがよかったからというだけです。
逆にマーケットが横ばい、下落していく際にきちっとリレーションが継続できるかが、今後の試金石になります。
運用に通じている筋からはコストが高すぎるという批判の多いファンドラップですが、コスト以上の便益を提供できるかどうか、ファンドラップの今後が掛かっています。
【参考記事】
・2015/9/22 銀行の投信販売現場に行ってきました。親が銀行のお客様(上カモ)だった!(その3)
ファンドラップ ~コストと期待リターン -多くの人は0.5%以下の利回りに2.5%以上の手数料を払っている!?
http://money-learn.seesaa.net/article/426530132.html
2014年11月5日水曜日
日本取引所グループ「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」を発表 不公正ファイナンスの防止へ指針
日本取引所グループの自主規制部門を担う日本取引所自主規制法人は、2014年10月1日、'「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」について'を発表しました。
上場企業が新株発行により調達した資金が、企業価値の向上につながるように使われなければ、既存株主は持株比率の希薄化、1株当たり利益の低下により、株式価値が毀損し、株主の損害を与えます。
証券取引等監視委員は、一部の上場企業のファイナンスについて問題視し、不公正ファイナンスの防止に努めています。
それは、大幅な希薄化や新たな支配株主の登場や「箱企業」と呼ばれる実態のない上場企業を通じて行われるエクイティファイナンスが横行し、株主の利益を著しく損なう手法などです。
・証券取引等監視委員 平成25年6月
不公正ファイナンスの実態分析と証券取引等監視委員会の対応
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2013/2013/20130626.pdf
最近では、引受証券会社が権利行使の保証を行わないノン・コミットメント型のライツオファリングです。
2013年には経営成績や財政状態が悪化した上場企業によるノンコミットメント型が急増し、問題視されてきたため、 東京証券取引所の上場制度整備懇談会は、企業の資金調達手法の1つであるライツ・オファリングについての提言を公表しています。
・日本取引所グループ 上場制度整備懇談会 2014/09/16
我が国におけるライツ・オファリングの定着に向けて
http://www.tse.or.jp/listing/seibi/discussion.html
(エクイティ・ファイナンスのプリンシプル)
第1 企業価値の向上に資する
調達する資金が有効に活用されて上場会社の収益力の向上につながることが、調達目的、資金使途、過去に調達した資金の充当状況、業績見通しなどに基づいて合理的に見込まれるものであり、また、その合理的な見込みに疑いを生じさせるような経営成績・財政状態及び経営実態となっていないこと。
ファイナンス実施後において、健全な経営管理が行われて持続的な企業価値向上の実現が十分に期待されること。
第2 既存株主の利益を不当に損なわない
ファイナンス手法、実施時期、発行条件等は、ファイナンスに伴う株式の希薄化や流通市場に与える影響等について十分に配慮されたものであり、既存株主に対して合理的な説明が可能なものであること。
第3 市場の公正性・信頼性への疑いを生じさせない
公正でない方法により利益を得ようとする主体やその協力者を、資本市場に参入させないこと。
個々には直ちに法令や取引所規則等の違反とは言えない取引を組み合わせ、全体として不当な利益を得るようなスキームとなっていないこと。
第4 適時・適切な情報開示により透明性を確保する
情報開示は、その時期が適切であり、その内容が真実で一貫性があり、その範囲が十分であり、かつ、開示資料等における説明が分かりやすく具体的で、株主や投資者が行う投資判断に有用なものであること。
ファイナンス実施後においても、発行時の開示内容が適切であったことを示せること。
エクイティ・ファイナンスのプリンシプルが期待する効果は下記とされています。
①上場会社においては、明示的なルールがない場合やルールの解釈が分かれる場合であっても、プリンシプルによって、エクイティ・ファイナンスの実施にあたり指針とすべき基本的な考え方に照らした上で経営判断を行うことが可能となります。
②引受人や証券会社、弁護士、公認会計士、コンサルタント等上場会社に対してアドバイスを提供する市場関係者においては、プリンシプルに示された基本的な考え方を十分に理解したうえ、上場会社がかかる基本的な考え方から逸脱することのないよう助言を行い、その適切な経営判断に貢献していくことができます。
③株主や投資者においては、プリンシプルが、上場会社の実施するエクイティ・ファイナンスの適切性を判断する際の拠り所となるため、より合理的な投資判断を行うための基礎とすることができます。
④金融商品取引所においては、自主規制業務の過程で、プリンシプルに示された基本的な考え方に沿って上場会社や市場関係者との対話を行うことが可能となります。また、直接適用可能なルールが見当たらない場合や包括的ルールの解釈・適用の場合には、プリンシプルに示された基本的な考え方が判断の指針となり、より実態に即した的確な対応が可能となります。
「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」についてのパブリックコメントと回答については下記で公表されています。
http://www.jpx.or.jp/outline/about/equityfinance.pdf
上場企業が新株発行により調達した資金が、企業価値の向上につながるように使われなければ、既存株主は持株比率の希薄化、1株当たり利益の低下により、株式価値が毀損し、株主の損害を与えます。
証券取引等監視委員は、一部の上場企業のファイナンスについて問題視し、不公正ファイナンスの防止に努めています。
それは、大幅な希薄化や新たな支配株主の登場や「箱企業」と呼ばれる実態のない上場企業を通じて行われるエクイティファイナンスが横行し、株主の利益を著しく損なう手法などです。
・証券取引等監視委員 平成25年6月
不公正ファイナンスの実態分析と証券取引等監視委員会の対応
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2013/2013/20130626.pdf
最近では、引受証券会社が権利行使の保証を行わないノン・コミットメント型のライツオファリングです。
2013年には経営成績や財政状態が悪化した上場企業によるノンコミットメント型が急増し、問題視されてきたため、 東京証券取引所の上場制度整備懇談会は、企業の資金調達手法の1つであるライツ・オファリングについての提言を公表しています。
・日本取引所グループ 上場制度整備懇談会 2014/09/16
我が国におけるライツ・オファリングの定着に向けて
http://www.tse.or.jp/listing/seibi/discussion.html
(エクイティ・ファイナンスのプリンシプル)
第1 企業価値の向上に資する
調達する資金が有効に活用されて上場会社の収益力の向上につながることが、調達目的、資金使途、過去に調達した資金の充当状況、業績見通しなどに基づいて合理的に見込まれるものであり、また、その合理的な見込みに疑いを生じさせるような経営成績・財政状態及び経営実態となっていないこと。
ファイナンス実施後において、健全な経営管理が行われて持続的な企業価値向上の実現が十分に期待されること。
第2 既存株主の利益を不当に損なわない
ファイナンス手法、実施時期、発行条件等は、ファイナンスに伴う株式の希薄化や流通市場に与える影響等について十分に配慮されたものであり、既存株主に対して合理的な説明が可能なものであること。
第3 市場の公正性・信頼性への疑いを生じさせない
公正でない方法により利益を得ようとする主体やその協力者を、資本市場に参入させないこと。
個々には直ちに法令や取引所規則等の違反とは言えない取引を組み合わせ、全体として不当な利益を得るようなスキームとなっていないこと。
第4 適時・適切な情報開示により透明性を確保する
情報開示は、その時期が適切であり、その内容が真実で一貫性があり、その範囲が十分であり、かつ、開示資料等における説明が分かりやすく具体的で、株主や投資者が行う投資判断に有用なものであること。
ファイナンス実施後においても、発行時の開示内容が適切であったことを示せること。
エクイティ・ファイナンスのプリンシプルが期待する効果は下記とされています。
①上場会社においては、明示的なルールがない場合やルールの解釈が分かれる場合であっても、プリンシプルによって、エクイティ・ファイナンスの実施にあたり指針とすべき基本的な考え方に照らした上で経営判断を行うことが可能となります。
②引受人や証券会社、弁護士、公認会計士、コンサルタント等上場会社に対してアドバイスを提供する市場関係者においては、プリンシプルに示された基本的な考え方を十分に理解したうえ、上場会社がかかる基本的な考え方から逸脱することのないよう助言を行い、その適切な経営判断に貢献していくことができます。
③株主や投資者においては、プリンシプルが、上場会社の実施するエクイティ・ファイナンスの適切性を判断する際の拠り所となるため、より合理的な投資判断を行うための基礎とすることができます。
④金融商品取引所においては、自主規制業務の過程で、プリンシプルに示された基本的な考え方に沿って上場会社や市場関係者との対話を行うことが可能となります。また、直接適用可能なルールが見当たらない場合や包括的ルールの解釈・適用の場合には、プリンシプルに示された基本的な考え方が判断の指針となり、より実態に即した的確な対応が可能となります。
「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」についてのパブリックコメントと回答については下記で公表されています。
http://www.jpx.or.jp/outline/about/equityfinance.pdf
2014年11月3日月曜日
日銀の追加緩和と「戦力の逐次投入」
2014年10月31日(金)、13時44分に、日銀は追加金融緩和の発表をしました。
市場は予想していなかったサプライズ発表。
「黒田バズーカ2」「10・31ショック」「ハロウィーン緩和」との言とともに、日経平均は3分で400円急騰し、終値は前日比755円高の1万6413円と約7年ぶりの高値となりました。
キーワードは「3」。
長期国債の購入を約30兆円追加し、ETFおよびJ-REITも3倍増のペースで増加するよう買い入れを行う、という黒田総裁のパフォーマンスも見られます。
日本銀行発表資料(2014/10/31)「量的・質的金融緩和」の拡大
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
(1)マネタリーベース増加額の拡大(賛成5反対4)
マネタリーベースが、年間約80兆円(約10~20兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。
(2)資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化(賛成5反対4)
① 長期国債について、保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間を7年~10年程度に延長する(最大3年程度延長)。
② ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。新たにJPX日経 400 に連動するETFを買入れの対象に加える。
2013年3月に就任した黒田新総裁はは、量的・質的緩和のスタートに際して、「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策を全て講じた」「これまでと次元の異なる緩和」である異次元緩和として、大胆さをアピールしました。
にも関わらずここでの追加緩和は「戦力の逐次投入」に当たらないのか?
『戦力の逐次投入は愚策中の愚策』として、非常に有名な戦略上の戒めです。
状況がやばくなってから戦力を投入することは、撤退できないから,泥仕合に突入する.絶対に負けれらない戦いに戦力を惜しむなんてことになり、結果、負け戦の損害が大きくなる、ということです。
やるからには「最初に」全戦力を投入することが最小限のダメージで最大の結果を引き出せるというものです。
黒田総裁は今回の追加緩和について、テレビ東京の記者の質問に対して、「戦力の逐次投入にはあたらない。これが不十分でリスクに対応できない、とは全く思っていない」と答えています。
BloombergでSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「数字だけを素直に読み解くと、物価目標達成の期限を事実上延期することになる」「金融政策の効果が乏しいことを認めず、達成期限をあいまい化するなら、逐次投入路線に陥りやすい。物価目標が厳しそうであれば、『物価見通しを引き下げて追加緩和』がパターン化する見込みだ。量的・質的金融緩和の拡大をずるずる続けやすいだろう」と指摘しています。
また、消費税増税路線へのサポートや、GPIFが基本ポートフォリオから日本債券の比率を大幅に下げることとの同調であるという受け止め方も多いのですが、黒田総裁は教科書通りの回答をしています。
・「消費税引き上げは政府が決定することであり、(金融政策が)影響を与えようとは思っていない」
・債券の保有比率を大幅に減らすことを検討していることとの関係には「GPIFの投資政策がどう動くかということと、金融政策は直接の関係は全くない」と否定
市場は予想していなかったサプライズ発表。
「黒田バズーカ2」「10・31ショック」「ハロウィーン緩和」との言とともに、日経平均は3分で400円急騰し、終値は前日比755円高の1万6413円と約7年ぶりの高値となりました。
キーワードは「3」。
長期国債の購入を約30兆円追加し、ETFおよびJ-REITも3倍増のペースで増加するよう買い入れを行う、という黒田総裁のパフォーマンスも見られます。
日本銀行発表資料(2014/10/31)「量的・質的金融緩和」の拡大
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
(1)マネタリーベース増加額の拡大(賛成5反対4)
マネタリーベースが、年間約80兆円(約10~20兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。
(2)資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化(賛成5反対4)
① 長期国債について、保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間を7年~10年程度に延長する(最大3年程度延長)。
② ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。新たにJPX日経 400 に連動するETFを買入れの対象に加える。
2013年3月に就任した黒田新総裁はは、量的・質的緩和のスタートに際して、「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策を全て講じた」「これまでと次元の異なる緩和」である異次元緩和として、大胆さをアピールしました。
にも関わらずここでの追加緩和は「戦力の逐次投入」に当たらないのか?
『戦力の逐次投入は愚策中の愚策』として、非常に有名な戦略上の戒めです。
状況がやばくなってから戦力を投入することは、撤退できないから,泥仕合に突入する.絶対に負けれらない戦いに戦力を惜しむなんてことになり、結果、負け戦の損害が大きくなる、ということです。
やるからには「最初に」全戦力を投入することが最小限のダメージで最大の結果を引き出せるというものです。
黒田総裁は今回の追加緩和について、テレビ東京の記者の質問に対して、「戦力の逐次投入にはあたらない。これが不十分でリスクに対応できない、とは全く思っていない」と答えています。
BloombergでSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「数字だけを素直に読み解くと、物価目標達成の期限を事実上延期することになる」「金融政策の効果が乏しいことを認めず、達成期限をあいまい化するなら、逐次投入路線に陥りやすい。物価目標が厳しそうであれば、『物価見通しを引き下げて追加緩和』がパターン化する見込みだ。量的・質的金融緩和の拡大をずるずる続けやすいだろう」と指摘しています。
また、消費税増税路線へのサポートや、GPIFが基本ポートフォリオから日本債券の比率を大幅に下げることとの同調であるという受け止め方も多いのですが、黒田総裁は教科書通りの回答をしています。
・「消費税引き上げは政府が決定することであり、(金融政策が)影響を与えようとは思っていない」
・債券の保有比率を大幅に減らすことを検討していることとの関係には「GPIFの投資政策がどう動くかということと、金融政策は直接の関係は全くない」と否定
2014年11月2日日曜日
GPIFが基本ポートフォリオ変更へ 国内債券 35%、国内株式 25%、外国債券 15%、外国株式 25%
年金積立金管理運用独立法人(GPIF)は、2014年10月31日に「基本ポートフォリオ」の新たな配分比率の目安を諮問。塩崎恭久厚労相がこの運用改革案を承認し正式に発表した。
GPIFは、厚生労働省から寄託された厚生年金や国民年金の積立金約127兆円を運用する。
2014年3月末時点で126兆5771億円。資産構成比では、国内債券が55.43%、国内株式16.47%、外国債券11.06%、外国株式15.59%、短期資産1.46%。
2013年6月7日に変更された現行の基本ポートフォリオからの変更は下記の通り。
国内債券 60%→35%(±10% )
国内株式 12%→25%(± 9% )
外国債券 11%→15%(± 4% )
外国株式 12%→25%(± 8% )
短期資産 5%→- (注)
(注)運用体制の整備に伴い管理・運用されるオルタナティブ資産(インフラストラクチャー、プライベートエクイティ、不動産その他運用委員会の議を経て決定するもの)は、リスク・リターン特性に応じて国内債券、国内株式、外国債券及び外国株式に区分し、資産全体の5%を上限。
また、経済環境や市場環境の変化が激しい昨今の傾向を踏まえ、基本ポートフォリオの乖離許容幅の中で市場環境の適切な見通しを踏まえ、機動的な運用ができる。ただし、その際の見通しは、決して投機的なものであってはならず、確度が高いものとする。
市場参加者の声(Bloombergより)
・「新基本ポートフォリオの国内債比率は40%程度に決まるというのがコンセンサスだっただけに35%なら低い印象」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊債券ストラテジスト)
・「国内株式もコンセンサスより高い。内外リスク資産投資を増やすことから、為替は円安に振れやすい。企業業績との状況から考えると、国内株は下値リスクが無くなり、日経平均1万5000円割れの可能性が低くなった。海外投資を増やすことから、海外株にはプラス」「新たな目安が今年度中なのか、3年先の中期なのかでマーケットへの影響は変わってくる。長期目標なら国内債の償還を待ちながら新規投資を抑えれば、債券市場への売り圧力はそれほど高まらない。現在も日銀が国債を買っていることから、大きな影響にはならない。償還を待ちながらその資金を国内株や海外株・債券に配分するということなら、マーケットに追加的影響は出にくい」(野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジスト)
・「期間をどうみるべきかは分からないが、来年度末までの16カ月程度を想定するのであれば、月間1%ポイント程度のウェート引き下げとなり、保有債券の償還分を考えても、月間の売却額が1兆円超に達することになる。市場で吸収可能な範囲内ではあるものの、やや負荷を感じる規模かもしれない」(SMBC日興証の森田氏)
公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議が2013年11月に国内債偏重の見直しやリスク資産の拡大を提言するなど、GPIFは保有の大半を占める国内債の削減と収益向上を求められていた。
○平成25年11月 報告書(公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/koutekisikin_unyourisk/houkoku/h251120.pdf
・国内債券を中心とする現在の各資金のポートフォリオについては、デフレからの脱却を図り、適度なインフレ環境へと移行しつつある我が国経済の状況を踏まえれば、収益率を向上させ、金利リスクを抑制する観点から、見直しが必要
・デフレ脱却を見据えれば、今後は、当該目標が現在より高い水準となる可能性もあり、こうした点を踏まえて、適切に収益目標を設定する必要
・リスク許容度については、過去の損失データに基づくリターンの振れ幅をベースに設定した上で、一定のモデルを用いたリスク計測や、シナリオ分析などにより、フォワード・ルッキングな(先行きを見据えた)検証を実施することが望ましい
厚生労働省 平成26年10月31日
年金積立金管理運用独立行政法人の中期目標の変更及び中期計画の変更の認可について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000063368.html
~年金積立金管理運用独立行政法人中期目標より抜粋~
○運用の目標
保険給付に必要な流動性を確保しつつ、長期的に積立金の実質的な運用利回り(積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたものをいう。)1.7%を最低限のリスクで確保することを目標とし、この運用利回りを確保するよう、年金積立金の管理及び運用における長期的な観点からの資産構成割合(以下「基本ポートフォリオ」という。)を定め、これに基づき管理を行う
○ベンチマーク収益率の確保
各年度において、各資産ごとに、各々のベンチマーク収益率(市場平均収益率)を確保するよう努めるとともに、中期目標期間において、各々のベンチマーク収益率を確保する
○運用手法について
長期保有を前提としたインデックス運用等のパッシブ運用を中心とする。例外については、これまでの運用実績も勘案し、適切に確たる根拠を説明できる場合に限るものとする
~年金積立金管理運用独立行政法人中期計画より抜粋~
○基本ポートフォリオの基本的考え方
年金積立金は巨額であり、市場への影響に配慮する必要があること、長期的には市場は概ね効率的であると考えられること等から、各資産ともパッシブ運用を中心とする。なお、アクティブ運用は、これまでの実績を勘案し、運用受託機関の選定に際して運用の手法、実績及び体制等を精査し超過収益確保の可能性が高いと判断される場合等に限り行うものとする。
また、ベンチマークをより適切なものに見直すなど収益確保や運用の効率化のための運用手法の見直し及び的確なパフォーマンス管理を行うなど運用受託機関等の選定・管理の強化のための取組を進めるとともに、運用実績等を勘案しつつ、運用受託機関を適時に見直す。
11/4午前の参院予算委員会にて
塩崎恭久厚生労働相は、「分散投資によってリスクを最小化しながら必要な利回りを確保する」との考え方のもとで、GPIFが新たな運用方針を決めた。
また、「安全かつ効率的に行う」、「デフレから脱却して緩やかなインフレ状態になる場合は金利の上昇が想定される」とし、「仮にGPIFの運用資産約130兆円を全額国内債券で運用したとすると、1%の金利上昇で約10兆円の評価損が発生する」と指摘。「どうやってリスクを最小化するかが最も大事になる」と説明しています。
GPIFは、厚生労働省から寄託された厚生年金や国民年金の積立金約127兆円を運用する。
2014年3月末時点で126兆5771億円。資産構成比では、国内債券が55.43%、国内株式16.47%、外国債券11.06%、外国株式15.59%、短期資産1.46%。
2013年6月7日に変更された現行の基本ポートフォリオからの変更は下記の通り。
国内債券 60%→35%(±10% )
国内株式 12%→25%(± 9% )
外国債券 11%→15%(± 4% )
外国株式 12%→25%(± 8% )
短期資産 5%→- (注)
(注)運用体制の整備に伴い管理・運用されるオルタナティブ資産(インフラストラクチャー、プライベートエクイティ、不動産その他運用委員会の議を経て決定するもの)は、リスク・リターン特性に応じて国内債券、国内株式、外国債券及び外国株式に区分し、資産全体の5%を上限。
また、経済環境や市場環境の変化が激しい昨今の傾向を踏まえ、基本ポートフォリオの乖離許容幅の中で市場環境の適切な見通しを踏まえ、機動的な運用ができる。ただし、その際の見通しは、決して投機的なものであってはならず、確度が高いものとする。
市場参加者の声(Bloombergより)
・「新基本ポートフォリオの国内債比率は40%程度に決まるというのがコンセンサスだっただけに35%なら低い印象」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊債券ストラテジスト)
・「国内株式もコンセンサスより高い。内外リスク資産投資を増やすことから、為替は円安に振れやすい。企業業績との状況から考えると、国内株は下値リスクが無くなり、日経平均1万5000円割れの可能性が低くなった。海外投資を増やすことから、海外株にはプラス」「新たな目安が今年度中なのか、3年先の中期なのかでマーケットへの影響は変わってくる。長期目標なら国内債の償還を待ちながら新規投資を抑えれば、債券市場への売り圧力はそれほど高まらない。現在も日銀が国債を買っていることから、大きな影響にはならない。償還を待ちながらその資金を国内株や海外株・債券に配分するということなら、マーケットに追加的影響は出にくい」(野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジスト)
・「期間をどうみるべきかは分からないが、来年度末までの16カ月程度を想定するのであれば、月間1%ポイント程度のウェート引き下げとなり、保有債券の償還分を考えても、月間の売却額が1兆円超に達することになる。市場で吸収可能な範囲内ではあるものの、やや負荷を感じる規模かもしれない」(SMBC日興証の森田氏)
公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議が2013年11月に国内債偏重の見直しやリスク資産の拡大を提言するなど、GPIFは保有の大半を占める国内債の削減と収益向上を求められていた。
○平成25年11月 報告書(公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/koutekisikin_unyourisk/houkoku/h251120.pdf
・国内債券を中心とする現在の各資金のポートフォリオについては、デフレからの脱却を図り、適度なインフレ環境へと移行しつつある我が国経済の状況を踏まえれば、収益率を向上させ、金利リスクを抑制する観点から、見直しが必要
・デフレ脱却を見据えれば、今後は、当該目標が現在より高い水準となる可能性もあり、こうした点を踏まえて、適切に収益目標を設定する必要
・リスク許容度については、過去の損失データに基づくリターンの振れ幅をベースに設定した上で、一定のモデルを用いたリスク計測や、シナリオ分析などにより、フォワード・ルッキングな(先行きを見据えた)検証を実施することが望ましい
厚生労働省 平成26年10月31日
年金積立金管理運用独立行政法人の中期目標の変更及び中期計画の変更の認可について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000063368.html
~年金積立金管理運用独立行政法人中期目標より抜粋~
○運用の目標
保険給付に必要な流動性を確保しつつ、長期的に積立金の実質的な運用利回り(積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたものをいう。)1.7%を最低限のリスクで確保することを目標とし、この運用利回りを確保するよう、年金積立金の管理及び運用における長期的な観点からの資産構成割合(以下「基本ポートフォリオ」という。)を定め、これに基づき管理を行う
○ベンチマーク収益率の確保
各年度において、各資産ごとに、各々のベンチマーク収益率(市場平均収益率)を確保するよう努めるとともに、中期目標期間において、各々のベンチマーク収益率を確保する
○運用手法について
長期保有を前提としたインデックス運用等のパッシブ運用を中心とする。例外については、これまでの運用実績も勘案し、適切に確たる根拠を説明できる場合に限るものとする
~年金積立金管理運用独立行政法人中期計画より抜粋~
○基本ポートフォリオの基本的考え方
年金積立金は巨額であり、市場への影響に配慮する必要があること、長期的には市場は概ね効率的であると考えられること等から、各資産ともパッシブ運用を中心とする。なお、アクティブ運用は、これまでの実績を勘案し、運用受託機関の選定に際して運用の手法、実績及び体制等を精査し超過収益確保の可能性が高いと判断される場合等に限り行うものとする。
また、ベンチマークをより適切なものに見直すなど収益確保や運用の効率化のための運用手法の見直し及び的確なパフォーマンス管理を行うなど運用受託機関等の選定・管理の強化のための取組を進めるとともに、運用実績等を勘案しつつ、運用受託機関を適時に見直す。
11/4午前の参院予算委員会にて
塩崎恭久厚生労働相は、「分散投資によってリスクを最小化しながら必要な利回りを確保する」との考え方のもとで、GPIFが新たな運用方針を決めた。
また、「安全かつ効率的に行う」、「デフレから脱却して緩やかなインフレ状態になる場合は金利の上昇が想定される」とし、「仮にGPIFの運用資産約130兆円を全額国内債券で運用したとすると、1%の金利上昇で約10兆円の評価損が発生する」と指摘。「どうやってリスクを最小化するかが最も大事になる」と説明しています。
顧客に人気があるのは投資家に儲けさせていない証券マン!?
山上秀樹氏のブログ記事(2014/11/1)「運用上手な証券マンはなぜ人気がないのか」では、投資家に儲けさせていない証券マンにお客さんの人気があったと延べています。
参照記事: http://takumi-ifa.cocolog-nifty.com/diary/2014/11/post-f272.html
同氏が証券会社に入社して1年ぐらいの頃の平成バブルのピークであった1989年に気が付いたそうです。
① 投資家を儲けさせている証券マン
② 投資家に儲けさせていない証券マン
では、圧倒的に②の証券マンがお客様から好かれていたとのことです。
その理由について、マーケットは、下記のような要因により、心地よい感情に従うと儲からない仕組みになっているためだと説明がされています。
損益が大きくなるほど鈍感に(感応度低減)
損の痛みは利益の2.5倍(損失回避)
なぜそうなるの、脳の働き(神経経済学)
例えば、証券マンが下記の提案をします。
「このA株とB株どちらも○○という理由で相当割安ですので、近い将来上昇すると思います。
過去のデータからも底堅いようですし。」
顧客が納得し、下記の買いを行います。
「両方とも2倍以上になる可能性は充分だな、下げても1割以上はここから下がらんだろう。
よし、両方とも100万円ずつ買っておこう。」
そして、その後、A株は120万円に上がっていますが、B株は80万円に値下がりしている場合、① の投資家を儲けさせている証券マンは、躊躇なくB株の損切りを勧めるが、②の投資家に儲けさせていない証券マンは、最初の購入理由のことは考慮しません。
投資家は損をするのが嫌いなので、
証券マンの
「株を売って堅く20万円利益を確保しておきましょう。
B株もそのうち反発して利食いになりますよ。なにせ良い株なんですから。」
という提案に、
「確かに今A株売れば20万円の利益か、もしこの後下がって利益がなくなったらばからしいしな。
それに俺の考えは間違ってないよな、こいつは俺の考えをよく理解している。いい提案だ」
と思って、結果、行き着く先は、小幅な利益が続く売買帳と評価損で身動きが取れなくなった投資残高が出来上がるということです。
*これは、証券マンが付いているかいないかによらず、個人投資家が共通して陥る心理のワナです。
証券マンの仕事は、お客を儲けさせるかどうかではなく、気持ちよく売買してもらえって手数料を頂けるかどうかなので、お客の感情に反して合理的に投資行動を導ける技量が本当は求められているのでしょうが、それはまた一段別のものということなのでしょう。
参照記事: http://takumi-ifa.cocolog-nifty.com/diary/2014/11/post-f272.html
同氏が証券会社に入社して1年ぐらいの頃の平成バブルのピークであった1989年に気が付いたそうです。
① 投資家を儲けさせている証券マン
② 投資家に儲けさせていない証券マン
では、圧倒的に②の証券マンがお客様から好かれていたとのことです。
その理由について、マーケットは、下記のような要因により、心地よい感情に従うと儲からない仕組みになっているためだと説明がされています。
損益が大きくなるほど鈍感に(感応度低減)
損の痛みは利益の2.5倍(損失回避)
なぜそうなるの、脳の働き(神経経済学)
例えば、証券マンが下記の提案をします。
「このA株とB株どちらも○○という理由で相当割安ですので、近い将来上昇すると思います。
過去のデータからも底堅いようですし。」
顧客が納得し、下記の買いを行います。
「両方とも2倍以上になる可能性は充分だな、下げても1割以上はここから下がらんだろう。
よし、両方とも100万円ずつ買っておこう。」
そして、その後、A株は120万円に上がっていますが、B株は80万円に値下がりしている場合、① の投資家を儲けさせている証券マンは、躊躇なくB株の損切りを勧めるが、②の投資家に儲けさせていない証券マンは、最初の購入理由のことは考慮しません。
投資家は損をするのが嫌いなので、
証券マンの
「株を売って堅く20万円利益を確保しておきましょう。
B株もそのうち反発して利食いになりますよ。なにせ良い株なんですから。」
という提案に、
「確かに今A株売れば20万円の利益か、もしこの後下がって利益がなくなったらばからしいしな。
それに俺の考えは間違ってないよな、こいつは俺の考えをよく理解している。いい提案だ」
と思って、結果、行き着く先は、小幅な利益が続く売買帳と評価損で身動きが取れなくなった投資残高が出来上がるということです。
*これは、証券マンが付いているかいないかによらず、個人投資家が共通して陥る心理のワナです。
証券マンの仕事は、お客を儲けさせるかどうかではなく、気持ちよく売買してもらえって手数料を頂けるかどうかなので、お客の感情に反して合理的に投資行動を導ける技量が本当は求められているのでしょうが、それはまた一段別のものということなのでしょう。
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