日経新聞(2015/7/20)は、バンガードがノーロード(販売手数料なし)、低コスト運用の投信を普及させるため日本の販売体制を強化していると伝えています。
バンガードは、上場投信(ETF)やインデックス投信で米国最大のシェアを持つほか、確定拠出年金でも米最大の運用会社。手数料を取らずに販売するノーロード投信の販売で業界のトップです。大手には、ブラックロックやステート・ストリートといった運用会社があります。
運用資産総額は5月末で3.3兆ドル(約350兆円)の巨大運用会社です。運用資産総額は下記の通り順調な増加です。
上場投信(ETF)の運用総額は5000億ドル(約62兆円)に近づき、市場シェアは20%です。うちアジア(中国・台湾、日本、シンガポール)が600億ドルだ。日本の運用資産は(未公表だが)14年の1年間に60%増えた。
また、クレディセゾン経由で販売する『セゾン・バンガード・グローバル・バランス・ファンド』の運用総額が5月下旬に1000億円を突破しています。
日経記事では、バンガード・グループのウィリアム・マクナブ会長兼最高経営責任者(CEO)へのインタビューが掲載されています。
資金流入加速の背景は、低コスト運用、ファンドの運用戦略の明確な説明など細やかなサービスが投資家の支持を獲得したというのがベースです。「08年の金融危機後、資金流入が加速した。投資家が資金を振り向ける際、信頼できる金融機関を重視するようになり、顧客本位の当社が投資家の支持を獲得した」と語っています。
また、「投信販売の事業モデルの変化も大きい。運用資産額に手数料を課すファイナンシャル・アドバイザー(FA)が広まり、(手数料を目的に投信の乗り換えを勧めるのではなく投資家に有利な)低コストの当社投信を推奨するFAが増えた」と語っています。
バンガードの運用資産全体の35%がFA経由で、10年前にはほぼゼロだっただけに大きく変化しています。40%は直販、残りは確定拠出年金による流入になっています。
*この点は主に米国での話で、日本では「運用資産額に手数料を課すファイナンシャル・アドバイザー(FA)」はいませんので(日本の法規制では難しくファイナンシャル・アドバイザーのプレーヤーがいない)、インデックス商品の普及にはまだまだ課題が多いのが現状です。
【関連記事】
2015/7/2 バンガードの新オフィスのセレモニーとパーティーに参加してきました。
http://money-learn.seesaa.net/article/421688484.html
その他インタビュー要旨
・日本での状況
「日本の販売が大きく上向いたのは、アベノミクスの効果も大きい。コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化や証券投資の環境改善が進んだ。当社は昨年、米国本社のリテール販売部門のトップを、日本法人の代表に任命した。日本法人を東京・千代田区の永田町に移し、規模を拡大した。直販や提携を軸に日本の事業拡大に備え、体制を整えつつある」
・日本事業の難しい点
「株式投資文化の欠如だ。最近は変わりつつあり、日本人の株式投資需要を感じるようになった。今後は日本株への投資だけではなく、グローバル投資の重要さを強調したい。過去20年間に世界中の株式に分散投資していれば、日本株や預金よりはるかに大きな利回りを確保できたはず」
「もう一つの壁は投信の販売体制だ。日本では証券会社が相当な額の手数料を取る。ノーロードを重視する当社はこうした販売体制に参加するつもりはない。投資家との利益相反を避けるのが難しいからだ。いずれ日本の市場にも変化が訪れる日が来ると信じている」
*1985年の初版以来、世界で50万部を超えるベストセラー『敗者のゲーム』は世界中で読み継がれている代表的な投資指南書。
著者であるチャールズ・エリス氏はかつてバンガードの取締役を務めていました。
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