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2014年8月4日月曜日

「商品販売型」ではなく「資産管理型」 丸三証券の営業姿勢

証券会社は、収益が販売した時の手数料収入が中心であるため、顧客にいかに売りつけるかという営業姿勢となります。(投資信託の場合、証券会社は、販売手数料を大よそ3%取り、残高に対して信託報酬2%のうち1%を得ますが、販売手数料の方がインセンティブが大きいため、販売を重視する営業姿勢となります)
「商品販売型」ではなく「資産管理型」のビジネスを目指すべく、無理な営業をせず、顧客のニーズに沿った商品を売ることに徹して20年以上前から取り組む証券会社が丸三証券です。
証券会社が投資信託を販売する場合、顧客に保有よりも売買により手数料を稼ごうとするため、比較的短期で解約が出て残高が伸びにくくなります。丸三証券は、投信残高を積み上げる異色の証券会社として、運用業界の関心を集めている証券会社です。

丸三証券の公募株式投資信託の預かり資産残高が2013年1月に6200億円を超え、それまでピークだった金融危機前の水準(07年10月の6023億円)を上回るところまで伸びています。
平成26年3月期の営業収益は231億円(平成25年3月期は176億円)、当期利益は61億円(平成25年3月期は61億円)、従業員数は平成26年3月末で959人(平均給与684万円、平均年齢34.6才)。

日経新聞では、「都心の豪華な一軒家に住む60代のある専業主婦は、投信のメーン口座を丸三にしている。「丸三さんには買いましょう、売りましょうという強い勧めがない」という営業姿勢が理由だ。以前は他の証券会社で強引な営業に根負けし、投信を買って損をした苦い経験もあった。「丸三の営業マンは余裕がある」と話す」とその営業姿勢が伝えられています。

丸三証券は、顧客の信頼を得られればより多くの資産を預けてもらえるとの考えから、営業目標はあるが「強制的な雰囲気はないように気を付けている」(企画部)という方針。
営業マンのインセンティブとしても、20年以上前から営業社員のボーナスの査定項目に預かり資産の純増分を取り入れています。今では人事査定のウエートでも資産純増分が過半となり、若手社員では最大約75%に上る体系となっています。

また、長期の資産運用を促す観点から、リスク分散が図れる投信の販売を重視しています。投信は国内だけで5000本以上もあり、初心者にはどれを選べばいいのかわかりにくい。丸三は顧客に勧める投信を年間2、3本に絞り込み、市場環境に適した投信を選ぶと、社内で頻繁に商品の勉強会を開催して営業社員の知識を深めるという体制をとっています。

丸三証券の投信販売の特徴は主に3つ。
1.経営方針で投信残高の積み上げを重視する姿勢を明確にしており、実際に残高を拡大している。
2.投信のラインアップの絞り込み。通常は年間2、3本程度まで。(証券会社は新規に販売をすることで収益を上げるので、証券会社の中には毎月のように新商品を投入し、販売開始後しばらくすると残高が伸びなくなるケースも多いのと対局)
3.分配金に対する考え方。同社が販売に力を入れてきた毎月分配型投信は分配金の水準が低め。→例えば1000億円を積み上げた「PIMCO ニューワールド」の円ヘッジタイプの分配は11年2月の設定以来、長らく月35円だった。この水準は同ジャンルのヒット商品に比べかなり低い。分配金を求める顧客は存在するが、分配金と基準価額の値上がりを示すトータルリターンを重視。

収益構造としても、人件費などのコストに対し、顧客から得る投信の信託報酬の割合は約3割に達し、1~2割強の他の証券会社より相対的に高いという構造になって表れています。

丸三証券の長尾会長は「理想からすれば(営業改革は)まだ6合目」と日経新聞で語っています。米国の証券会社ではコストに対する信託報酬の割合は7割程度に達するようです。


信託報酬によりコスト分が賄えれば、証券会社としては、相場動向に左右されにくい収益構造となり、無理に販売手数料に依存し、顧客が望まない商品を販売する現在の証券会社とは一味違った展開になります。一方で、信託報酬での収入水準は低いので、残高を相当上げてかなくてはいけません。アベノミクス前までは赤字も出していましたが、丸三証券の挑戦に注目です。


(参考)
日経(2014/8/4)「丸三証券、投信「がんばらない営業」で収益着々」
日経(2013/6/20)「丸三証券、株式投信の残高と信託報酬が過去最高 1月」

【参考記事】
・2015/9/22 銀行の投信販売現場に行ってきました。親が銀行のお客様(上カモ)だった!(その3)
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